まもなく、東日本大震災から2年。当時は各地で食品が品薄となり「食」への備えを不安に思った人も多いだろう。大規模災害では広範囲で流通が滞り、必要な食材が入手しにくくなる可能性がある。非常食にもなる常備食を紹介する。(村島有紀)
◆缶詰を日常使い
水産食品を扱う「マルハニチロホールディングス」(東京都江東区)が昨年8月、インターネットで消費者1千人に「非常食」について聞いたところ、備蓄している人は約5割。品目(複数回答)は、缶詰(82・3%)、飲料水(77・6%)、カップ麺・カップスープ(72・5%)、レトルト食品(63・9%)の順で多かった。缶詰を週に1日以上利用している人は23・3%で、普段使いの食品を非常食として備蓄していることも分かった。
東京都文京区に住む管理栄養士で医学博士、本多京子さんは東日本大震災で、「1週間は買い物せず、家の中にあるものを食べる」と決め、実践した。自宅には常にタマネギ、ニンジンなどの常備野菜のほか、約100個の缶詰を保管。賞味期限別に「今年食べ切るもの」「来年-」「再来年-」の3つに分類し、使ったら買い足すことを繰り返している。
調理法は、サバ缶をみそ汁に入れて「あら汁」風にしたり、サンマのかば焼きをニラとネギで炒め、卵を絡めて丼の具材にしたり…。普段も手間なく作れるレシピを中心に、1週間に5缶のペースで消費する。
「魚の缶詰はDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富。サンマのかば焼きではビタミンB2、B6もとれる。非常時に『いつもの味』を食べることで精神的に落ち着くので、普段から調理しなれていることが大事」とアドバイスする。
◆フレンチも
味にこだわった非常食も増えている。通販大手の「ディノス」(中野区)では、しっとりとした食感のレトルト食品「マジックライス・パスタ」(12袋で4300円)や、ふんわり焼きたて風味の缶パン「アキモトのパンの缶詰」(10缶で3100円)などが人気だ。同社では、賞味期限を迎える3カ月前に購入者に通知し、日常食として食べきるよう勧めている。
フェリシモ(神戸市中央区)は、本格フレンチが楽しめる缶詰セット「キュイジニエレッスンプログラム」(4缶1箱で7800円)を昨年末から販売。保存食(賞味期限1年)にもなり、結婚記念日や誕生日などでの家庭料理として提案している。
◇
■缶詰やレトルト食品を組み合わせ 栄養バランスに配慮を
自治体が配布する緊急支援物資は、乾パンや米など炭水化物に偏りがちだ。
東日本大震災の避難所では発生から数カ月間、タンパク質やビタミン類が不足したため、厚生労働省は当面の栄養参照量(1日分)を例示。「総エネルギー=2000キロカロリー、タンパク質=55グラム、ビタミンB1=1.1ミリグラム、ビタミンB2=1.2ミリグラム、ビタミンC=100ミリグラム」を被災自治体に求めた。水溶性ビタミン類は体内に蓄積されにくく欠乏症が出やすいからだ。
国立健康・栄養研究所は実際に配布された食材を基に、避難所における献立例を作成。缶詰やレトルト食品を組み合わせ、栄養バランスを考えた献立を紹介している。
同研究所の食事摂取基準研究室、笠岡宜代室長は「各家庭で備蓄する食材の参考にしてほしい」と話している。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130303/trd13030308390001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130303/trd13030308390001-n2.htm