物忘れなど認知機能が低下し、人格も変化するというアルツハイマー病の怖さはよく耳にする。日本で認知症の患者は300万人、65歳以上の5%、85歳以上では25%に症状が表れるといわれ、社会の高齢化とともに患者数も増えている。
--認知症とはどんな病気ですか
橋本律夫教授簡単に言えば、「知」が壊れる病気です。脳という臓器が生み出す働きの総称を「知」「認知」といいます。認知症は一つの症状名で、その原因疾患はいくつかあるのです。
認知症は原因別に大きく3つに分かれます。1つは原因を除けば治るもの。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症などが原因となるものです。2つ目は予防が大事なもので、脳血管障害性など生活習慣病のなれの果てともいえるもの。3つ目が一番やっかいで、神経変性疾患といい、代表的なのがアルツハイマー病です。神経細胞が減るのですが、原因が十分に解明されていません。
--アルツハイマー病の原因は分からないのですか
--そのタンパク質がたまるスピードは人により違うのですか
遺伝的にたまりやすい人はいます。若年性アルツハイマー病で、40代からアルツハイマー病になる人は、βアミロイドというタンパクを産生している遺伝子の異常が見つかっています。
また症状発現の閾値(いきち)が高い人と低い人がいます。機能的予備力のあるなし、つまりもともと知的能力が高く、いろいろ考え、情報アクセス対応力のある人は、認知症になりにくいともいえます。
--認知症の診断は
操作的に行い、有名なのは長谷川式認知スケールです。スクーリングテストで、30点満点で20点以下は認知症とされますが、それは一つの目安です。点数ではなく、認知症を疑うのは、今までできていたことができなくなるということですね。
認知症の有無は、話を聞いたり、神経心理テストで判断しますが、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の画像を撮ったり、脳血流の写真を撮ったり、血液検査をしたりして確認して、原因疾患を調べます。脳血管障害とアルツハイマー病が合併していることもあります。
--治療法は
最も患者の多いアルツハイマー病に効く薬は「アリセプト」1種類しかなかったのですが、平成23年、3種類が加わりました。脳内神経伝達物質のアセチルコリンを増やす「レミニール」という飲み薬と、「リバスタッチ」「エクセロンパッチ」の貼り薬です。もう一つはNMDA受容体拮抗(きっこう)剤の「メマリー」です。
記憶障害などの中核症状は薬剤治療になりますが、認知症患者の反応による環境要因の強い周辺症状には、本人が精神的に安定する環境を周囲の人がつくってあげることが大切です。
治療には他人の力が必要です。認知症の人は自分が病気とは思わず、薬を飲んだことも忘れます。1人では何ともできません。ほかの病気と大きく違うところです。
--認知症が疑われたら
早く専門外来を訪れてほしい。でも、本人は物忘れの自覚がなく、回りが気付いて連れてくることが多いのです。
認知症では記憶障害に関する自己認識が薄れ、内省がなくなります。それで自分で病院を訪れることもない。身寄りのない人、老夫婦の場合、相当症状が進んでから、近所の人が気付くことも多いのです。
--予防法は
アルツハイマー病の危険因子は生活習慣病とほぼ一致します。糖尿病、高血圧、運動しない人はアルツハイマーになりやすい。動脈硬化が進んで血流が不十分だと、神経細胞死が早まります。生活習慣病の予防は認知症の予防にも役立ちます。興味のある好きなことを何でもやってみることも、予防になります。
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