風疹の流行
昨年から関西や関東など本州を中心に風疹が流行しているようです。風疹は風疹ウイルスが原因となって起こる感染症で、2~3週間の潜伏期間を経て発疹、発熱が起こり、リンパ節が腫れますが、症状がないこともあります。発疹がでる2~3日前から発疹が出て5日くらいまで感染力があると言われています。
妊娠中(特に初期)の女性が風疹に感染すると、難聴、先天性心疾患、白内障を三大症状とした先天性風疹症候群を赤ちゃんに生じることがあります。母親に発疹などの症状が出ても胎児に感染するのは約3分の1、感染した胎児のうち先天性風疹症候群になるのは約3分の1と言われています。
アガサ・クリスティの推理小説で、先天性風疹症候群の赤ちゃんを産んだ女性が、自分の妊娠中に風疹をうつした相手を恨んで殺人を犯すというものがあり、妊娠中に風疹にかかることの重大さが描かれています。国立感染症研究所によれば、昨年だけで5人の先天性風疹症候群の赤ちゃんが国内で生まれたと報告されています。
ワクチンで予防 しかし30代後半の男性は…
風疹の予防政策は、先天性風疹症候群を防ぐことに重点が置かれたため、1977年から女子中学生を対象にワクチン接種を行っていました。男子全員に接種するようになったのは1995年です。そのため、現在30代後半以上の男性は抗体を保有していない人が多いと思われます。今年になっても風疹の感染者は増え続けていますが、そのほとんどは成人男性です。
集団の9割が抗体を持っていると流行というものは起こりにくいのですが、成人男性がワクチンを打たれていないとなると流行したのは仕方がないと言えます。子供の病気と思われがちの風疹ですが、成人がかかって重症化することもあり、周りにいる妊婦ににうつすかも知れません。男性もみな抗体を持っておくべきです。
ワクチンを一回しか接種していないと、抗体ができる率は95~99%とされ、2回打てばまず大丈夫とされていますが、初期妊婦さんで抗体を持っていない人は珍しくありません。妊娠する前に抗体をチェックしておくか、調べずにワクチン接種を受けることをおすすめします。麻疹も妊娠中にかかると流産や死産を起こすことがあるため、MRワクチン(麻疹風疹ワクチン)がよいでしょう(風疹ワクチンによる赤ちゃんへの影響は報告されていませんが、念のため接種から2か月は避妊した方がよいとされています)。予防接種からもれたと思われる男性も、抗体を調べるか、ワクチン接種を受けることをおすすめします。抗体を持っている人がワクチンを受けても害はないので、検査を飛ばしてワクチンを受けてもいいでしょう。
次世代のためにワクチンを!
今の制度では、1歳と小学校入学前の2回MRワクチンを受けることになっています。娘には1歳になってすぐに受けさせました。
時々、ワクチンなんて必要ない、と受けさせない親がいるそうですが、ワクチンを受けさせてもらえなかった子が病気にかからずに済んだとしても、それはほとんどの子供がちゃんと打っているからで、ワクチンが不要であることとは全然ちがいます。ワクチンは受ける人のためであり、社会の流行を防ぐためであり、引いては次世代の子供のためです。
この流行が早く収束し、もうこのような事態にならないように、一人一人が備えていただけばと思います。
■ 参考URL
国立感染症研究所
・http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-crs-intro.html
・http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubellaqa.html
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=72739&from=yh