[ カテゴリー:医療, 生活 ]

ひとつの病院で2つの診療科を受診するなら 同じ日に診てもらったほうが医療費はおトク!?

肝臓の病気を患っているAさんは、隣町にある○×病院の内科に通っている。

○×病院は、内科のほかに、外科、整形外科、放射線科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、産婦人科、小児科など15の診療科がある。入院設備もあり、ベッド数は150床を備えている。

今も内科の治療は続いているが、このところ目がかすんだり、物がぼやけて見えるようになってきたので、通い慣れている○×病院の眼科を受診した。診断の結果は白内障で、手術を受けるために眼科にも通院することになった。

Aさんの自宅から○×病院までは、電車を乗り継いで約1時間以上かかる。交通費もかかるので、どうせなら同じ日にまとめて診察を受けたいと思って受付に行ったところ、事務職員にこんなことを言われたのだ。

「同じ日に、ふたつの診療科を受診することはできません。日を改めて来てください」

まだ、受付時間は終わっていなかったので、理由を聞いてみたものの、「できません」の一点張り。仕方なく、その日は内科の診察だけ受けて帰ってきたという。

なぜ、○×病院はAさんにこのようなことを言ったのだろうか。そこには、医療費のカラクリと病院の厳しい経営事情が隠されているようだ。

同じ日に複数の診療科を受診すると、2つ目は初診料、再診料が半額になる

健康保険を使って受ける検査、投薬、手術などの価格は、ひとつひとつ国が決めている。この価格を「診療報酬」といい、薬の処方せん料68点(内服薬7種類未満)、静脈内注射30点などと点数で表示されている。そして、実際に行った診療行為の点数を積み上げ、その合計に10円をかけたものが医療費の総額になる。

医療費がいくらになるかは病気やケガの種類、その人の状態によって異なるが、治療内容にかかわらず毎回かかるのが「初診料」「再診料・外来診療料」と呼ばれる基本料金だ。この中には、問診や触診、血圧測定などの簡単な検査が含まれており、現在は次のような点数になっている。

●初診料

その病気やケガではじめて医療機関を受診したときにかかる基本料金。現在は、診療所でも病院でも一律に270点(2700円)。70歳未満の人の自己負担割合は3割なので、810円を自己負担する。

●再診料・外来診療料

その病気やケガで2回目以降に医療機関を受診したときの基本料金。再診料は、診療所、ベッド数が200床未満の中小病院で適用されている診療報酬で69点(690円)。入院用のベッド数が200床以上の大きな病院では外来診療料と呼び名が変わり、点数も70点(700円)と10円高くなる。

初診料、再診料・外来診療料は、原則的に外来で診察を受けると誰でもかかる。ただし、同じ日にひとつの病院で複数の診療科を受診すると、2科目は半額になり、初診料は135点(1350円)、再診料・外来診療料は34点(340円)に減額される。さらに、3つ目以降はいくつ受診しても、初診料、再診料・外来診療料がかからなくなる。

具体的にはどうなるのだろうか。入院用ベッド数が200床未満の病院に、70歳未満(自己負担割合3割)の人が通院しているケースで考えてみよう。

●ケース1:はじめて内科を受診した同じ日に、眼科もはじめて受診した

このケースでは、内科の初診料は2700円がかかるが、眼科の初診料は半額の1350円になる。2つの初診料の合計4050円で、別々の日に受診するより医療費は1350円安い。自己負担するお金は400円安くなる。

●ケース2:内科を受診するのが2回目で、同じ日にはじめて眼科を受診

内科の再診料は通常通りの690円。同じ日に別の診療科を受診した場合、初診料は半額になるので眼科は1350円。これは、どちらの科を先に受診しても関係ない。合計2040円で、眼科を別の日に受診するよりも1350円医療費は安くなる(自己負担は400円安い)。

●ケース3:内科を受診するのは3回目で、同じ日に2回目の眼科を受診

内科の再診料は通常通り690円。同じ日に2回目の受診をした眼科の再診料は半額になるので340円。合計1030円で、別の日に眼科を受診するよりも350円医療費は安くなる(自己負担は110円安い)。

●ケース4:内科と眼科を受診するのは3回目で、同じ日に整形外科の2回目の受診をした

3つ目の再診料は加算できないので、整形外科の再診料は0円。この場合は、ケース3と同様に、内科と眼科の再診料の合計は1030円。それぞれの診療科を3日に分けて受診すると再診料は2070円になるので、まとめて受けたほうが医療費は1040円安くなる(自己負担は310円安い)。

こうした診療報酬の決まりがあるため、冒頭のAさんのようにひとつの病院で複数の診療科を受診する場合は、同じ日に受けたほうが医療費は安くなる。

受診する日が変わるだけで、自己負担額が減るのだから、患者にとってはおトクな仕組みといえるだろう。

一方、診察する病院の立場になってみれば、患者が同じ日に複数の診療科を受診しようが、別々の日に受診しようが、治療内容が変わるわけではないし、事務作業が減るわけでもない。一日のうちで診療するのべ患者数は変わらないのに、病院の収入は少なくなるので、同一日に複数の診療科を受診する患者が増えることは歓迎できることではない。

冒頭のAさんは、そうした病院側の事情によって、眼科の診療を断られたようなのだ。

続きはこちらから・・・
http://diamond.jp/articles/-/32629

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