目元を華やかで印象的に見せるおしゃれ「まつ毛エクステンション(エクステ)」が、若い女性を中心に人気だ。その一方、目の症状や皮膚炎を訴える人も後を絶たない。目は、とてもデリケート。傷つけないよう注意してほしい。
テープで皮膚炎/視力障害の恐れも
まつ毛エクステは、シルクや化学繊維でできた人工毛を、接着剤でまつ毛に貼り付ける美容技術。従来の付けまつ毛より自然な仕上がりで、3~4週間持つので手間が少ないことから、人気に火がついた。
「1回付けると楽なので続けてやってしまう」と言うのは、10年近く前から愛用している東京都内の女性(35)だ。ただ、目に異常を感じることも多く、「夜、顔を洗った後に目が痛くなって、鏡を見たら白目が真っ赤になっていたり、目がしみたりするのはしょっちゅう」と話す。
まつ毛エクステの健康被害について、国民生活センターには2009年度以降、年90件以上の情報が寄せられている。美容サロン向け保険の代理業を手がけるビューティガレージ(東京都)によると、過去5年間でサロンから寄せられた保険相談約6000件のうち、まつ毛エクステ関連は約1800件と3割を占める。
健康被害の多くは、接着剤によるもの。新しい手法だけに、使う接着剤には成分や成分表示の規制がなく、有害物質が含まれている可能性もあり、注意が必要だ。直接目に入らなくても、洗顔で溶け出したり、気化した化学物質が影響したりするので、付けた日の夜や翌朝など、時間がたってから発症することが多い。
除去剤の化学物質で症状が出ることや、人工毛を付ける時に使うピンセットやテープ、人工毛そのものが目を傷つけることもある。
目の症状は、角膜炎や結膜炎が主だ。治療には抗生剤や角膜を保護する点眼薬などを使い、多くは2週間程度で治る。しかし、感染によって角膜の上皮より深いところに炎症が進むと、治りにくくなる。
日本眼科医会副会長で烏山眼科医院(東京都)院長の福下公子さんは「角膜障害が感染によって角膜潰瘍に至ると、治癒しても角膜の濁りが残る。潰瘍が瞳の位置に起きると視力障害の恐れもある。気になる症状があったら、自分で判断せず眼科医を受診してほしい」と注意を呼びかける。
まぶたや目の周りの皮膚炎も、よくみられる症状だ。接着剤や除去剤、人工毛を付ける時に目の周辺に貼るテープで、腫れやかぶれを起こす。東邦大医療センター大森病院(東京都)スキンヘルスセンター教授の関東裕美(かんとうひろみ)さんは「目の周りの皮膚は一番薄く、吸収しやすい。特に乾燥で皮脂の膜が取れやすい冬場や、アレルギー体質の人は、刺激の影響を受けやすいので気をつけてほしい」とアドバイスしている。
まつ毛エクステを巡っては、サロンが急増し、衛生管理や健康被害への対応が不十分と指摘されてきた。厚生労働省が、実施には美容師資格が必要としたのに対し、業界団体は反発。独自資格の創設を要望し、美容師の教育課程にまつ毛エクステに関するものがない矛盾点を指摘した。それを受け、厚労省は美容師教育の見直しを進めている。
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