難病と闘う患者を支える仕組みを整えることが重要である。
厚生労働省の厚生科学審議会は、難病の診療体制や患者への支援策の提言をまとめた。厚労省は具体化のための法整備を目指す。
難病は、患者数が少なく、原因不明で治療法が確立していない病気を指す。長期にわたり生活への支障が生じる。全体で5000~7000種類に上るとされる。
このうち、診断基準が明確で、医療費負担が重い筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病など56疾患が医療費の助成対象になっている。
提言の柱は、医療費の助成を見直し、対象の病気を300程度に拡大することだ。
56疾患以外にも、重い医療費の負担を強いられる難病患者が少なくないことを考慮した。助成を受けていない病気の患者との不公平の解消を図ることは、妥当と言えるだろう。
さらに提言は、医療費が無料となっている重症患者からも、所得に応じて自己負担を求めた。助成対象者が増え、財政負担が年1200億円を超えた事情がある。
財源確保に知恵を絞る必要があるが、より多くの患者を援助するには、医療費助成の給付水準を引き下げることはやむを得まい。
提言では、多様な分野の専門医がいる大学病院などを、難病医療の拠点病院として新たに指定することも求めている。難病治療には神経内科、循環器科など多くの診療科の連携が必要なためだ。
重要なのは、難病患者が確実に専門医の診断を受けられる体制を構築することである。拠点病院に専門医を適切に配置することが欠かせない。
難病は患者数が少ないために、診療経験の豊富な専門医も限られる。正しい診断を受けるまで、何年も様々な医療機関を訪ね歩く患者は少なくない。
専門医がいる医療機関の情報をデータベース化し、患者が検索できるようにしてはどうか。
最初に診療する医師は、自身が専門医でなくても、的確に専門医を紹介することが求められる。一般の医師が難病への知識と理解を深めることが大切だ。
提言は、難病研究の強化も打ち出した。病気のメカニズムを解明するための遺伝子解析や、再生医療技術を活用した新しい治療法の研究を推進する。
多くの患者が待ち望んでいる病気の原因究明や新薬開発に、官民で力を入れてもらいたい。