インターネット上の掲示板で中傷を受けたなどとする相談が急増している。昨年1年間で全国の法務局に寄せられた件数は3903件(速報値)で、過去最多だった前年の3113件を上回った。法務局の働きかけでプロバイダーが削除に応じるケースもあり、法務省は「困ったときは相談してほしい」と呼びかけている。
法務省人権擁護局によると、相談の大半は名前や顔写真などの個人情報をさらされ、中傷されたというもの。名前や携帯電話のアドレスとともに、性的な写真が掲載されている▽中学生の娘を中傷する書き込みがある――などの相談が寄せられている。実際に就職活動に影響が出たり、精神的に不安定になって外出できなくなったりした深刻なケースもあるという。
人権擁護局が統計を取り始めた2001年は191件だったが、ネットの普及とともに昨年までに約20倍に急増した。11年10月に大津市の中学生が自殺した問題では、学校関係者やいじめたとされる少年らを実名で非難する書き込みが続き、実際には無関係だった人まで標的にされた。
人権侵害にあたる書き込みに対しては、被害者がプロバイダーや掲示板の管理者に削除を求められるが、実効性がない場合もある。被害が広がるおそれがあれば、被害者に代わって法務局が削除を要請している。削除の手続きがわからない人への助言もしている。
11年に法務局が名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害にあたると判断したのは624件。法務局はうち559件で削除要請の方法などを被害者にアドバイスし、62件で直接削除を要請した。
要請に強制力はなく、最終的に削除するかはプロバイダーの判断になる。しかし、被害者本人の要請には応じなくても、法務局からの要請には応じるケースもあるという。
悪質な書き込みは刑法の名誉毀損罪に問われることもある。人権擁護局は「無責任なうわさは人権侵害につながりかねない。匿名でも発信者の特定は可能で、書き込みには責任が生じるとの認識が必要」と呼びかけている。
電話相談は無料。受け付けは平日午前8時半~午後5時15分。全国共通人権相談ダイヤル(0570・003・110)へ。
朝日新聞社
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