[ カテゴリー:災害, 生活 ]

地震対策に知恵を集める住民 今更「自助」打ち出す行政

■アイデアと意欲の避難村 大分・佐伯市

国の中央防災会議が出した新想定で、最大10メートル前後の津波が襲うとされる大分県佐伯市米水津の宮野浦地区。17メートルの高台に、住民らの自主防災組織「むらの覚悟委員会」が設けた避難施設がある。災害対策本部と備蓄倉庫に使うコンテナ2基が並び、備蓄倉庫には住民が持ち寄った生活用品や企業寄贈のポリタンクに入った水が収められている。コンテナの間にビニールシートをかけ、下で避難者が雨などをしのぐ仕組みだ。

NPO法人と共同で行う先進的事業に交付される大分県の補助金400万円を受け、地区住民と企業などが手作りで整備した。東日本大震災後に、住民が完成させた避難施設の「成功例」といえる。

宝永4(1707)年の地震と津波の伝承が残り、防災意識の高い地区。東日本大震災の津波の衝撃から、平成23年10月に委員会が立ち上がったものの、委員長でもある宮脇茂俊区長(67)は「住民だけでは具体的に何をすればいいかわからず、最初は議論も空転した」と振り返る。

しかし避難施設の“象徴”でもあるコンテナが設置されたことで、住民らの防災意識が高まったという。設置すれば、そのまま施設として使えるコンテナの調達は、水産加工業者の会長で、地域住民の一人でもある渡辺正太郎さん(58)らの発案だ。

地区には水産加工業15社が工場を置き、従業員は計約400人にのぼる。渡辺さんは「地域の協力で工場は成り立っている。社員の命を守る観点からも、企業もできる限り協力する」と話す。コンテナは、企業の取引業者の“つて”で、中国から安く調達した。

さらにNPO法人「豊の国商人塾」の黒川豊治さん(53)らが会議に加わり、中立的立場から議論の問題点を浮かび上がらせていく「ファシリテーター」と呼ばれる役割を果たし、「解決すべきものは何か、ビジュアルで住民にわかりやすく伝える『見える化』という手法も会議で使い、防災意識を高めていった」(黒川さん)と話す。

宮脇さんは「目に見える『成果』のコンテナ設置から、住民の意識が一気に高まった。いろんな人の知恵やアイデアにも助けられた。今後もコンテナの数を増やすなど施設を拡張していきたい」と話す。地域住民や地方自治体が求めるハードの整備には「金」がかかる。金をできるだけかけず、「人(の知恵)」や「住民の意欲」を結集した成功例は、まだ少ない。

■「自助」打ち出す行政に住民は「ようせんわ…」 高知

住民側から、ハード面の整備や金銭的支援を求める声が高まれば、財政的に限界のある自治体や国の対応との間で“ギャップ”が広がる可能性がある。

昨年12月、「県人口の半数が被災する」との独自の新浸水想定を公表した高知県は、数日後に開いた「南海地震被害想定検討会」で、「これまで公助に頼りがちだったが、命を守るのは自分(住民自身)」との姿勢をアピール、自助を前面に打ち出した。

耐震化、家具の固定、ハザードマップなどによる避難行動の確認、連絡手段の確保、食料・水の備蓄…。次々と並ぶ課題に、住民側の出席者からは「(多すぎて)お腹(なか)いっぱいでようせんわと思ってしまう…」との声も漏れた。

岩手県釜石市で、小中学生のほぼ全員が東日本大震災の津波からの避難を成し遂げた「釜石の奇跡」の立役者として知られ、検討会の委員も務める片田敏孝・群馬大院教授(避難対策)は、会議で「自助だけで可能なのは家具の固定ぐらい。防災の大部分は、実際は自助と共助を合わせた『地域共助』に含まれる。地域共助の足りない部分を公助で補うという考え方の整理が必要だ」と提案した。

片田教授は「地震や津波は住民個人ではなく『地域』を襲う。だから本来、自助、共助、公助を色分けして防災するのではなく、地域で知恵を出し合い、どう共闘態勢を組んでいくかが問われる」と話す。

http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/education/snk20130121502.html

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