[ カテゴリー:生活, 社会 ]

<弔いのかたち>生前整理 遺品を喜ばれる形で

◇ジュエリーを今風にリフォーム アルバムはデータ化

いつかは訪れる人生の終わり。その時、自分の遺品をどのように家族に残せばよいのか。生きているうちに自分の持ち物の整理を行う「生前整理」が注目されている。ジュエリーや写真を、喜ばれる形で譲るためのサービスも広がっている。【榊真理子】

東京都内に住む女性(62)は昨年9月、ジュエリーのリフォームや修理、買い取りなどを行う「アイデクト」(本社・東京都港区)を訪ねた。持ち込んだ一つが、約10年前に亡くなった母の形見のダイヤの指輪。ジュエリー好きだった母が、小学校の卒業式ではめていたのを覚えている。「せっかくあるのにデザインが古くて使えない。もったいないので、今風にリフォームを頼みました」

店ではデザイナーの下池恵子さんが、女性の希望を聞きながら目の前でデザイン画を描く。指輪に付いていた大きな青いオパールはネックレスに、ネックレスの淡水パールは指輪やイヤリングにした。「ダイヤの指輪は立て爪が高く引っ掛かったので、低くしてもらった」という。

女性は「リフォームして身につけると『母の物だ』という気がして、表情や会話を思い出す」と話す。自分が死んだら、ジュエリーは弟の嫁やめいに譲りたいと思っている。下池さんは「ご自身の死後、遺族に喜んで使ってもらえるようにリフォームする年配者は多い」と話す。

アイデクトは2年前から、住宅型有料老人ホームなどを定期的に訪れ「出張相談会」を行っている。今夏、高齢者向け住宅などで暮らす70~85歳の女性89人に「譲り受けたジュエリーで困ったこと」を尋ねると、「デザインが古くて使えない」が68%とトップだった。逆に「うれしかったこと」は「すぐに身につけられるデザインだった」が64%で最多だった。

生前整理で悩みそうな物といえばアルバムだ。「カメラのキタムラ」が昨年4月から始めた「アルバムそのままDVD/フォトブック」は、アルバムを持ち込んでデータ化するサービス。保管がしやすそうだ。

高性能のスキャナーでアルバム1ページをそのまま読み込む。テレビで1枚ずつスライドショーのように見られるDVD(ブルーレイ)▽1枚ずつの写真画像を集めたDVD▽アルバムを小さくしたようなフォトブック(通常サイズ・縦横約15センチ)――の3点を作ってくれる。アルバム1冊で5980円。販売促進担当の高橋渉さんは「アルバムの写真に掛けてあるビニールシートははがさず、現状のままデータ化する。50~60代の方の利用が多い」と話す。

故人の思い出の写真をごみ同然に処分していいかどうかも悩ましいが、写真を供養してくれる神社や寺もある。千葉厄除(よ)け不動尊妙泉寺(千葉県東金市)と富士浅間(せんげん)神社(群馬県藤岡市)は、みかん箱1箱分で5000円。倉留寺(そうりゅうじ)(島根県出雲市)はA4の封筒サイズで1000円、みかん箱1箱分で3000円、それ以上は1箱4000円。いずれも持ち込み、郵送とも受け付けている。

◇60代からのライフワークに

「生前整理~人生の衣替え~」(宝島社)の著者、古堅(ふるかた)純子さんは「生前整理は死への準備ではなく、快適な空間で限られた時間を前向きに生きるために行う」と話す。必要かどうか判断する作業は、精神的にも体力的にもエネルギーがいる。「80代になってからでは難しい。子どもの独立、定年退職など人生の節目になる60代から始めるのがおすすめです」

しかし、今の60代は「物を大切に」と教えられてきた世代なので、捨てられない人が多い。「使えるかどうかでなく、実際に使う物と使わない物を分けるのがポイント」。使わない物はビニール袋にまとめる。「1部屋がビニール袋だらけになってもいい。すぐに捨てられなくても、時間がたつと不要な物は色あせて見えて、判断がつきます」

整理する時は、キッチンやリビングの引き出しから始め、洗面所、洋服ダンスなどへ広げていく。「思い出の物が詰まった納戸や押し入れは難しい。ボールペンや輪ゴムなど、判断しやすい物が多い引き出しから始め、まずは達成感を味わって」。注意点は、収納に使わない物を押し込み過ぎないこと。「使う物を収納に入れ、机や棚の上など見えるところには何も置かない方が気持ちがいいはず」。収納の容量を超える物は持たない。物が多いと必要な時に出てこなかったり、掃除機をかける時もイライラしたりするからだ。

「30~40年かけてたまった物の整理はすぐには終わらない。1日1カ所などルールを決めて、ライフワークにしましょう」

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《連絡先》

アイデクト(全国14店舗) 電話0120・777・679、インターネットhttp://www.aidect.jp

千葉厄除け不動尊妙泉寺 電話0475・55・8588

富士浅間神社 電話0274・22・2597

倉留寺 電話0853・31・6388

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20121204ddm013040019000c.html

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