野村総合研究所(以下NRI)は、2011年の純金融資産保有額(注)の世帯数と資産規模を各種統計等から推計し、11月22日に発表した。また、2012年2月~3月に、全国の高額納税者を対象に実施した「NRI富裕層アンケート調査」の結果も同時に公開した。
○富裕層・超富裕層の世帯数は10.3%減少
NRIは純金融資産保有額(保有額から負債を差し引いた値)を、5つの階層(※)に分類して推計した。すると、純金融資産1億円~5億円未満の「富裕層」と、同5億円以上の「超富裕層」の世帯数および保有する純金融資産額は、2011年時点で81.0万世帯、188兆円だった。
この結果は、1997年以降に推計した中でのピークである2007年と比較して、富裕層の世帯数は9.7%減少、超富裕層の世帯数は18.0%の減少。両者を合わせた世帯数は、10.3%の減少となった。保有する純金融資産も、富裕層および超富裕層はそれぞれ23.8%、32.3%減少し、合わせて26.0%の減少となっている。
理由としては、まず2008年から2009年にかけてのリーマンショックで株価が急落し、リスク性商品を相対的に多く保有する富裕層・超富裕層の資産が大幅に減少したことが考えられる。2009年から2011年については、2011年3月に発生した東日本大震災後の株価や地価の低迷が大きいようだ。
○資産はリスク性資産から、預貯金等の安全資産へ移行
「富裕層アンケート調査」では、保有する金融資産の内訳について尋ねた。すると預貯金(MRF・預け金、金銭信託・貸付信託を含む)の割合が、2007年から2012年にかけて、富裕層では39%から45%に上昇。また、超富裕層でも、25%から40%に上昇したことが明らかになった。一方、株式の割合は、同期間に富裕層が27%から24%へ、また超富裕層では32%から19%に減少している。
資産運用に関しては、「金融商品を選ぶ際には、たとえリターンが低くても安全・確実を最優先にしたい」という考え方が、2007年の62%から2012年には66%に増加(全くそう思う、もしくはどちらかといえばそう思うどちらかに回答した割合)。特に「全くそう思う」は19%から28%に増加しており、資産運用において安全志向が高まっていることが分かった。
○相続対策の実施は、全般的に上昇の傾向
続いて、相続対策の実施について尋ねたところ、2007年から2012年にかけて全般に上昇。具体的な方法として、「遺言状の作成(公正証書、自筆証書)」を実施した割合が12%から21%へ、「家族への生前贈与や住宅取得資金の援助」を実施した割合が34%から47%に上昇している。
その理由について、相続税や贈与税の改正の動きがあることの他、相続に関する情報が世の中に多く出回るようになったことや、富裕層・超富裕層の高齢化が進んだことなどが考えられるという。
「NRI富裕層アンケート調査」は高額納税者名簿において、2003年~2005年の期間中に1回以上掲載された人(全国5,000名を抽出)。有効回答310名のうち、本人と配偶者の保有する金融資産が1億円以上の186名を集計対象とした(金融資産1億円~5億円141名、金融資産5億円以上45名)。
※純金融資産階層は、超富裕層は純金融資産5億円以上、富裕層は同1億円以上5億円未満、準富裕層は同5,000万円以上1億円未満、アッパーマス層は同3,000万円以上5,000万円未満、マス層は同3,000万円未満と分類
http://news.goo.ne.jp/article/mycom/life/living/mycom_723108.html