◇子どもには「引き算」で
愛らしいこのクマ。小さめに作ったスイートポテトにアーモンドの耳をつけ、チョコペンで顔を描いた簡単おやつだ。おやつコーディネーター、山崎(やまざき)しづかさんのアイデアが光る。
山崎さんは7歳の男の子のママ。今回は「現役(げんえき)ママ」のおやつ作りを、じっくりと聞いてみよう。まず、おやつ作りを続ける秘訣(ひけつ)は何ですか?
「いかに家にあるもので作るか。一度に作ってしまおうと思わず、今日は芋(いも)をふかすだけとか、生地(きじ)を作って冷凍するだけとかにして、別の日に仕上げるのもコツですよ」
子どもを産む前は、自作のスイーツをカフェに卸したり、お菓子教室を主宰(しゅさい)したりしていた。ただ、プロのお菓子作りと、子どものためのお菓子作りは「正反対」という。
「パティシエはチョコと果実を合わせたり、微妙な味を引き出そうと『足し算』します。でも、子どもには素材の味を教えたいから、なるべくシンプルな材料がいい。香料も、つや出しもいりません。子どものおやつは『引き算』なんです」
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長男が2歳の時、友人とお茶を飲みながら「カフェに行きたいね」と話したことがあるという。場所は公園。カフェで子どもに泣かれると気が引けるからだ。同じ悩みを持つママは多いだろうと考え「1日親子カフェ」を企画。山崎さんがお菓子作りも教えることにした。参加者を募(つの)ると、すぐ満員になった。
5、6歳の子を連れた人、乳児をおぶった人。見ず知らずのママがおしゃべりを楽しんだ。子どもは子どもだけで近くで遊び、ぐずることも少ない。「ぐずっても、子ども同士の間で楽しいことが起きると、自然と遊びの輪に戻っていく。先輩ママは子どもの扱いがうまいな、など勉強にもなりましたね」
子どもの一人が「一緒にお菓子を作りたい」と言い出した時、その子の母親は「家だとイライラしちゃうけど、ここなら私に余裕があるから」と、子どもを優しく迎え入れた。
母親が長時間、孤独に育児をする「孤(こ)育て」が深刻だ。ベネッセ次世代育成研究所の調査では、0~2歳の一人っ子を持つ母親の34%が「立ち話程度もできる人がいない」と答えた。サポートが必要な母親は多い。カフェイベントは今年の夏に地方に引っ越すまで、5年間続いた。
自身は「できる限りのことをしたい」と育児に手をかけた。布おむつ、母乳育児、ベビーマッサージ……。「どんないい子になるか、見てみたい」と思った。だが「みんな持って生まれた性格がある。いろいろやってみたけど、振り返ると(そこまで手をかけなくても)変わらないのかなって気もしますね」。
期待がイライラに変わらなかったのは「孤育て」でなかったから、かも。自宅で仕事をする夫は「母乳は出せないから、風呂に入れるのは俺(おれ)の仕事」と、ベビーバスの頃から面倒を見てくれた。「元々がイクメンだったのではなく、大変さを間近で見たからだと思う」と山崎さんは感謝している。
手間をかけることの効果は疑問だが、後悔(こうかい)もない。「自己満足ですね。『私はこんなに頑張った!』と納得(なっとく)できればいいんじゃないかな」【田村佳子】=次回は12月24日
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★クマのスイートポテト
〓材料〓(4センチ程度のもの12個分)
▽サツマイモ 200グラム(正味)
▽バター 20グラム
▽砂糖 30グラム
▽卵黄 1個分
▽牛乳 大さじ2
▽アーモンドスライス 24枚
▽チョコペン
〓作り方〓
(1)サツマイモはよく洗って適当な大きさに切り、ラップをして軟らかくなるまで電子レンジで7~8分加熱する。
(2)スプーンを使ってサツマイモの身を皮から取り除き、フォークで丁寧に潰す。
(3)鍋に移し、砂糖、バターを加えて弱火にかけ、2分ほど練る。
(4)ボウルに移し、卵黄、牛乳を加えてそのつどよく混ぜる。 ※牛乳の量はサツマイモの硬さによって加減する。
(5)1センチの丸口金をセットした絞り袋に入れ、オーブンペーパーを敷いた天板にドーム状に絞り出す。卵黄(分量外)をハケで塗り、アーモンドスライスを差し込む。
(6)200度のオーブンで、薄く焼き色がつくまで8~10分ほど焼く。冷めてからチョコペンで顔を描く。
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■人物略歴
◇やまざき・しづか
著書に「わたしのおやつ。こどものおやつ。」「やさいのおやつ」など。子育てやレシピを記したブログも人気
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/education/20121126ddm013100017000c.html