永遠の眠りは”墓友”と 高齢者施設、相次ぎ共同墓地を設置
先祖代々からのお墓ではなく、終(つい)の棲家(すみか)で出会った仲間と一緒のお墓に入りたい-。そんな思いを抱く高齢者のニーズに応えようと、高齢者向け住宅や有料老人ホームが共同墓地を設置するケースが増え始めている。申し込んだ人たちは一緒のお墓に入る仲間を“墓友(はかとも)”と呼び、生前から合同供養祭に参加するなどして交流を深めている。(加納裕子)
◆入居者で話し合い
「皆さんと一緒ならば、寂しさを感じることはありません」
11月1日、神戸市北区の神戸山田霊苑で行われた共同墓地の開眼式。墓石の除幕の後、参加者の女性(77)がにこやかに語った。女性は今年1月に夫を亡くしており、近く夫の納骨を行う。もちろん自身も入るつもりだ。この日、女性を含めて13人が参加したが、ほとんどの人がこの墓地に入る予定だ。
この共同墓地は、平成21年10月にできた同市西区の高齢者向け住宅「ゆいま~る伊川谷」(72戸)の運営会社が計画。きっかけは、複数の入居予定者からの「お墓をどうしよう」という相談だった。入居者らと話し合いを重ね、約3年かけて完成した。
◆だれでも利用可能
共同墓地には入居者だけでなく、配偶者や先祖代々のお墓も改葬できる。遺骨はそれぞれ布製の袋に入れて埋葬。使用料は1人25万~35万円、先祖代々の遺骨を埋葬する場合は50万~60万円。別途6万円を支払えば、氏名や没年月日などを墓碑に彫刻できる。運営は社団法人コミュニティネットワーク協会(東京都中央区)が担い、協会員になれば、入居者に限らずだれでも利用可能だ。
高齢者施設が共同墓地を設置するケースはここだけではない。全国7カ所で有料老人ホーム「ゆうゆうの里」を運営する日本老人福祉財団(東京都中央区)では兵庫県と静岡県に1カ所ずつ、共同墓地を設置した。契約者は計300人を超え、最近も相談が増えているという。墓所・墓石販売などを手がける「メモリアルアートの大野屋」(東京都新宿区)は「まだ数は少ないが、こうしたケースが徐々に出てきている。今後はさらに増えていくのではないか」と指摘する。
◆年1回くらいは…
理由は「先祖代々のお墓を受け継ぐのが難しくなってきたため」。子供がいない人、子供にお墓のことで迷惑をかけたくない人…。少子化や核家族化で、自分の代まではお墓を守れても将来的に無縁仏になるかもしれないとの不安もある。
こうした高齢者のニーズについて、高齢者住宅情報センター大阪(大阪市北区)の米沢なな子センター長(59)は「葬儀や仏壇の簡略化が進み、お墓も例外ではなくなってきている。それでも海に散骨して終わりではなく、だれかに年に1回くらいは弔ってほしいと考える人が増えているのでは」と分析する。
出会って間もない隣人と一緒に埋葬されることにも、抵抗はないようだ。
高齢者住宅に入居している80代の女性は「年を取ってからの友人は適度な距離感が分かっていて、互いの違いを尊重できる。これまでの人間関係にはない心地よさがあります」と“墓友”との関係について説明する。亡くなった夫と一緒の墓に入る予定だったが、「みなさんと一緒の共同墓地もいいなあと魅力を感じ始めています」と話していた。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20121115116.html