◇軽さ、肩の負担和らげ 孫育ての祖父母、使用
祖父母(そふぼ)世代がかつて、子どものおんぶひもとして使っていた「兵児(へこ)帯」が今「抱っこひも」として再び注目されている。軽くて扱いやすく、親子ともラク。「孫育て」する祖父母と親の世代をつなぐアイテムにもなりそうだ。【田村佳子】
東京都内のデパートで9月にあったへこ帯の実演会。帯をつけてもらった近くの主婦、竹安智枝美(たけやすちえみ)さん(40)は「軽くてラク」と驚いた。
へこ帯は、一般の抱っこひもに比べて子どもが親の体に密着(みっちゃく)する上、肩ひも部分の幅も広げられ、肩や腰への負担が少ないという。「全身の筋肉を使って抱いているみたい。子どもも安定感がある」と竹安さん。8カ月の長女もニコニコとご機嫌(きげん)で、ママの胸にピタッと顔を寄せていた。
普段使っている海外製の抱っこひもは「ひも自体が重く、使っていると肩が痛くなる」のが悩み。竹安さんは「ひもの重さがほとんどないのはうれしいですね」と、へこ帯に関心を寄せていた。
「抱っこひも」としてへこ帯を製造販売している「北極(ほっきょく)しろくま堂」(静岡市)の園田正世(そのだまさよ)社長(45)は「綿(めん)100%なら、洗濯機で洗えて清潔。長時間おんぶや抱っこができるので、家の中でも使ってみて」と勧める。
ポイントは、最近の抱っこひもより高い位置で抱っこやおんぶすること。抱っこなら赤ちゃんの額に楽にキスできる高さ、おんぶなら赤ちゃんが親の肩越(ご)しに前が見えるくらいが適当だ。
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へこ帯は、かつて男性が普段着(ふだんぎ)に使っていた和服の帯。幅広のちりめん地などの柔らかい生地(きじ)で、おんぶひもとしても一般的に使われていた。そんなへこ帯が見直されている理由は、単に「軽さ」だけではないようだ。
高島屋(たかしまや)の子ども用品のバイヤー、川嶋直子さんは、育児に参加する祖父母が増えていると指摘する。「4、5年前からどの店舗(てんぽ)のベビー用品売り場でも、祖父母の姿を見かけます。パパやママと一緒でなく、単独で来られる方も多いですね」
だが、祖父母世代は子育てに関する世代間ギャップに戸惑(とまど)い、親世代に遠慮(えんりょ)する傾向があるという。育児に懸命(けんめい)な親世代は、つい「自分流」の育児を通したくなるもの。NPO法人「孫育(まごそだ)て・ニッポン」の棒田(ぼうだ)明子理事長(りじちょう)は「親世代に『余計なことをして』と怒られたりしないかと、自信をなくしている祖父母はとても多い」と話す。
デパートを訪れた70歳の女性は「今の抱っこひもはあちこち留めるところがあって、とても使えない」。孫の面倒を見る時、家にあるへこ帯を「こっそり」使ったが「古いものは今の親世代には勧めにくくて……。お店で(へこ帯を)紹介してもらうと、安心して使えますね」と話していた。
「昔も今も、子育ての根本はそんなに違わない。古いものは悪いもの、では決してないですよ」と棒田さん。祖父母世代が「孫育て」に積極的(せっきょくてき)に参加することにエールを送るとともに、親世代も年配者の知恵を賢(かしこ)く取り入れるようアドバイスしている。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/education/20121008ddm013100039000c.html