県内各地でツキノワグマの“主食”になるブナの実がほとんど結実せず、クマの餌不足が深刻だ。同様にブナが凶作だった平成18、22年度にはクマの目撃・痕跡情報は他の年に比べ5倍前後増え、それぞれ1000件を突破した。大量出没する年の目撃情報は9~11月に多く、10月がピーク。県は今後、クマが大量に出没するとみて、注意を呼びかけている。
21日午後5時半ごろ、魚沼市七日市新田の畑で、農作業中の男性(83)がクマに襲われて右腕を引っかかれ、軽傷を負った。今年のクマによる人身被害は2件、2人となった。
クマは秋になると、冬眠に備え食いだめをする。ブナ、ミズナラなどのドングリ類が中心だが、クマのすむ山にはブナが多く、ブナの豊・凶作が人里への出没と密接な関係を持つ。県が8月に26市町村、302地点で調べたところ、ブナは1023本のうち78・4%で実がない凶作、17・0%がわずかしか実らない不作と判明した。23年度は7割近くが豊作で、餌を探しに人里に降りるクマは少なく、目撃情報も182件だったが、今年は22日現在、既に251件となり、昨年度を上回っている。
ツキノワグマは作物を荒らす有害獣の半面、九州では絶滅が宣言されるなど、希少な大型哺乳類。環境省や県調査に基づく県内の生息数は推定1082頭だが、多発年の18年度に521頭、22年度には452頭が捕獲され、ほとんどが殺処分されている。
県は昨年、保護管理計画を策定し、クマの捕獲上限を年間128頭と定めたが、大量出没すると捕獲、殺処分の増加は避けられない。クマを寄せ付けないためには家の周囲に生ごみや農作物を放置せず、山に入るときはラジオや鈴を鳴らすのが効果的。県は今後も、地域振興局単位に設けた対策チームを通じ、市町村などと連携して対策を進める方針だが、一人一人がクマと出合わない工夫も求められている。
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