夏に子どもの患者が急増するウイルス性の皮膚病「水イボ」(伝染性軟属腫)。昔からピンセットでつまみ取る治療が行われてきたが、親としては子どもが痛がって病院嫌いになるのが心配だ。一方、積極的な治療をせず、自然治癒を基本とする医師もいる。水イボは取る? 取らない?
東京都品川区の会社員、兼高絹代さんは1月、4歳の長女の腰などに発疹があるのに気付いた。様子を見るうちにイボは増え続け7月には顔を含めて10個以上になった。
皮膚科で治療を頼むと、感染のもとになるイボの芯をピンセットでつまみ取られた。驚いた長女は泣き出し、病院に行くのが怖くなったよう。「かわいそうだったけど、増える前に取れば良かった。今後はすぐに取ってもらうつもり」と絹代さんは話す。
水イボは、皮膚の弱い場所を中心に直径1~3ミリ程度の光沢のある発疹ができる。皮膚に直接ウイルスが触れて感染し、約7週間後に発疹になるが、空気や水を介しては感染しない。個々の発疹は数カ月後には自然に消えるが、免疫が完成するには年単位の時間がかかるとも言われ、放置すると100個以上の水イボができる場合もある。
神奈川県立こども医療センターの馬場直子皮膚科部長は、アトピー性皮膚炎との合併を心配している。「肌のバリア機能が弱く(ウイルスを)広げやすい。アトピーの治療薬のステロイド剤を塗ると水イボが増えるので、アトピーの治療にも支障を来す」と指摘する。
「水イボの治療に関する意見は、医師の間でもかなり相違がある」と話すのは、ちとふな皮膚科クリニック(東京都世田谷区)の江畑俊哉院長。江畑院長が09年、区内などの皮膚科医と小児科医計191人にアンケート調査したところ、水イボは「治療した方がよい」と答えたのは皮膚科63%、小児科47%。「治療の必要なし」は皮膚科4%、小児科11%、「どちらでもない」は皮膚科33%、小児科42%だった。
筑波学園病院(茨城県つくば市)小児科の藤田光江医師は「ある保育園で水イボがたくさんある子がいたので受診を勧めたが、放置した結果、かなりの子に水イボが広がった」と指摘。「集団生活をしている場合は、治療は必要」と訴える。
一方、かたおか小児科クリニック(川崎市)の片岡正院長は「免疫ができるまでは取っても再発するし、免疫ができれば自然に治る」と患者に説明。「痛い思いをさせて取ったところで、どの程度の効果があるのか疑問」として、アトピー患者や、感染が極端に広がっている場合のほかは、特に治療は勧めていない。園医を務める保育園では「プールも登園も禁止しなくてよい」と助言しているという。
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水イボ治療が議論になるのは、ピンセットでつまみ取る治療が「痛いから」に尽きる。ピンセット以外の治療法=別表=も採用されているが、結局「ピンセットを使うのが最も治りが早くて確実」(馬場医師)のようだ。つまみ取る時の痛みを和らげるために使う局所麻酔テープは、6月から健康保険が適用になった。
どの段階で受診すればよいか。藤田医師は「増えてきたら早めに皮膚科へ」と助言する。馬場医師は「本人の症状が軽くても、うつすとその子の症状が重くなるかもしれないので、治療してほしい」と話す。
感染した場合、裸同士の接触を避け、タオルの共有はしないことが周囲への感染対策になる。ウイルスは肌の弱いところに感染するので、保湿クリームを塗るなどのスキンケアで、予防を心掛けよう。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20120903ddm013100016000c.html