消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法の成立で「大増税時代」が幕を開ける。東日本大震災の復興増税など政府が着々と手を打ってきた増税策だけでなく、社会保険料の引き上げや首都圏の住民には東京電力の電気料金値上げも加わり、家計は相次ぐ負担増に翻弄されそうだ。大和総研の試算などをもとに消費税増税後の平成28年を舞台にした苦しい家計の予想図を描いた。
「マイホームは諦めるしかないのか…」。東京都内の中堅メーカーに勤める男性(40)は頭を抱えた。妻と小学生の子供2人の4人家族。長引く不景気で給与水準は上がらず、年収はまだ約500万円だ。
大震災から5年がたち、消費税は2段階で増税された。毎日の買い物には10%の税率が上乗せされ、5年前と比べると年間17万円近く出費が増えている。
15歳までの子供がいる世帯を対象にした減税(年少扶養控除)は民主党政権が廃止、その分を財源に充てるはずだった「子ども手当」は「児童手当」に名を変えて縮小された。あてにしていた子育て資金は、これで10万円以上消えた。
電気代も高くなり、厚生年金保険料は29年まで毎年引き上げが続く。あれこれ合わせると、なんと年34万円以上の負担増になった。
「どうやって穴埋めしたの?」。驚いた男性は妻に尋ねた。食費や光熱費のほか、夫婦の洋服代、子供たちが楽しみにしている外食費など日々の生活を少しずつ切り詰めたうえで、足りない分はマイホームの購入や老後に備えて毎月5万円を積み立てていた預貯金を削っていたらしい。
子供たちの進学費用など今後の出費を考えれば、預貯金は減らしたくない。男性は困り果て、専門家に相談することにした。
ファイナンシャルプランナーの柳沢美由紀さんは「預貯金だけで負担増に対応すれば毎月3万円が消える計算です。将来設計を考えると非常に重い」と指摘。「優先順位を付けてストレスを減らしながら節約しましょう」と助言する。
まず着目するのは固定費。生命保険料や携帯電話の料金、利用していないスポーツクラブの会費など毎月引き落とされる経費を見直せば着実に節約できる。
日々のやりくりは毎月使える金額を大まかにでも把握したうえで、こだわりの少ない分野から順に減らしていくのがコツだ。「食費など特定の分野を削らなくてはいけないと思い込むと続かないケースが多いです」(柳沢さん)
ただ、いくらストレスを減らしても妻や子供には我慢を強いることになる。「とりあえず晩酌を減らすか」。家族を守るため、男性は「身を切る改革」に取り組むことを決めた。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/snk20120811082.html