大津市で昨年10月、中学2年の男子生徒が自殺した問題は、学校や市教委の対応の不備が次々と明らかになっている。いじめ問題を受け、新潟県教委などは庁内連絡会議を設置し、いじめ発見時の対応強化などに乗り出した。県内では児童・生徒に対する人権講演や、いじめ体験者による教職員向け講演会なども各地で開かれている。その一端を取材した。
新潟市南区白根の市立白根第一中学校(477人)で20日、新潟のお笑い集団「NAMARA」に所属する芸人、高橋なんぐさん(31)が人権について講演した。同市では地区ごとに、いじめについての講演会などを開いている。
笑いがあふれる中、高橋さんは、人前で話すのが極端に苦手だった少年時代について話した。「一番苦手だったことが、今一番得意になっている。自分の可能性を決めつけないで。そして周りのことも決めつけないで」と呼びかけた。
いじめについては「いじめられている人、いじめている人が全体の1割ずつぐらい」とした上で「そのいじめを止めたり、何か行動を起こせるのが残りの8割の人」と訴えた。
高橋さんは、主に県内の小中学校で500回以上も身近な社会問題や、進路などに関して講演を重ねている。最近は人権がテーマの講演依頼が増えたという。「大津の事件を良いとも悪いとも何とも思わない生徒もいる。なんでもいいから自分で考えてほしい」と強調した。
◇33歳、今も不眠に悩み
新潟市の家庭教師の男性(33)は小1~高3と長年にわたり、激しいいじめを受けた。この体験を元に教職員に講演をしている。思い出すのはつらいが、いじめを少しでも食い止めたいとの思いからだ。
男性は小1の入学式の翌日、ランドセルで顔面を殴られ、血だらけになった。なぜ自分がターゲットになったか分からなかったが、以降、常習的ないじめが続いた。その影響からか、小1から今までずっと不眠に苦しみ続け、フラッシュバックも起こる。現在も睡眠薬を服用し、カウンセリングを受けている。
男性は、社会では恐喝、暴行などに当たる犯罪行為が、学校では「いじめ」という名で軽んじられる▽ゲーム感覚でエスカレートし、常習化する▽いじめを受けている側に問題があるという空気が周囲にある--という三つの問題を挙げる。
男性は「意外かもしれないけれど、先生も簡単にはいじめに気づかない」と話す。男性は子どものころ何年も、自分がいじめを受けていないと教諭の前で演技していた。教諭に訴えたら、その分いじめが激しくなるためだ。男性は「先生がいじめを見抜くのは難しいかもしれない。見抜く教育も受けていない」と感じる。いじめがあると、その学校の評価が下がるといった世間の風潮も問題視する。
「先生は完璧じゃないし、学校で問題は起こるもの。でも、いじめが長期化したら、その子の人生が取り返しがつかなくなることがある」と訴える。
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