◇隠して働く患者も/「症状伝え互いに理解を」
「てんかん患者による交通事故が起きるたびに病気のことが注目されるが、背景に病気への無理解から来る偏見や就労差別があることを知ってほしい」。日本てんかん協会事務局長の田所裕二さんは訴える。5月28日に東京都千代田区の衆院第2議員会館で開かれた日本てんかん協会の集会では、患者や家族から「発作で職場から自主退職を求められた」などの切実な声が相次いだ。
栃木県鹿沼市で昨年4月、てんかん患者が運転するクレーン車が小学生の列に突っ込み6人が死亡した事故以降、協会には患者たちから、就職や職場で差別的な扱いを受けたとの相談が次々に届いている。
「病気を申告して車の免許を取ったのに、通勤も含めて運転のない職場に回された」
「就職活動で採用直前に健康診断書を出したら、てんかんと書いてあったのを見て『職場が迷惑を被ると困る』と言われ、内定を取り消された」
ある地方に住む30代の男性会社員も、病気が原因で就職や職場で不利益を受けてきた。
最初の発作は小学生の時。教室で気を失い、病気を理由にいじめられた。大人になってから自分に合う薬が見つかり、発作は7年ほど起きていないが、就職活動では病名だけで面接さえ受けられない会社もあった。病気を隠して働いたこともあるが、薬を飲んでいるところを見つかり、解雇された経験もある。
現在勤める会社には、持病を申告した。「会社に心配をかけないよう、発作が起きないようにと、規則正しい生活を徹底している」という。それでも、てんかん患者の交通事故が大きく報じられるたび「解雇されるのでは」と不安がよぎる。
「仕事を長く続けられるかは、患者にとって切実な課題。生活を維持するのがいかに大変かを理解してほしい」と男性は訴える。
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てんかん発作は脳の過剰な神経活動で起きる一過性の症状。倒れたり、体の一部だけが勝手に動くなど、さまざまな例がある。子どものころに発病することが多いが、頭のけがや脳炎などによって起きることもある。患者は全国に約100万人。発作の時以外は普通の生活ができるが、社会の理解が進んでいないことから、病気を隠す患者も多い。
障害やてんかんのある人の就労に詳しい就労支援コンサルタントの二見武志さん(31)は「企業担当者には『てんかん患者はみんな泡を吹いて倒れる』という誤った認識を持っている人もいるが、実際は顔が引きつる程度の症状の人もいる」と指摘。「まずは病気を正しく理解すべきだ」と企業側に求める一方で、患者に対しても「自分の発作のパターンをきちんと把握し、職場に隠さず伝えることが大切だ」と語る。
「偏見を気にして、発作の頻度や症状を正直に言わない人もいるが、周囲に正しく伝えることは社会で働く上での責任。それがお互いの理解にもつながるはずです」
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てんかん患者の就労に積極的に取り組んでいる職場もある。
東大阪市でクリーニング店を経営する「白栄舎」は、全従業員約30人の大半が障害者。うち6人にてんかんがある。普段から家庭と密接に連絡を取りながら、職場では従業員に小さな変化があれば、互いに声掛けをするなどの配慮をしている。これまで、仕事中に発作を起こした従業員はいない。
高見正章社長(66)は「周囲で支える人たちがいて、本人も病気や服薬管理への自覚があるから対応できている。みんな真面目によく働いています」と強調。「雇用する側は偏見を持たず、その人自身や病気を知ることが重要です」と話している。
◇松江の主婦、公表し活動「正しい知識広めたい」
患者の日常を伝えようと、病気を公表し啓発活動を続けている人もいる。
松江市の主婦、島本真規さん(36)は、日本てんかん協会の機関紙「波」に、自身の暮らしぶりを寄稿している。
小学2年生の時、初めて発作が起きた。現在は3カ月に1回程度の割合で発作があり、数十秒間意識を失う。移動手段として使うバスの中でも発作が起きることもあるが、発作がない時は普通に生活できる。
「私の場合は、ホッと気を休めた時に発作が起きることが多い。息子が幼いだけに、2人でいる時に発作が起きることが一番不安」と、島本さんは心情を吐露する。病気を伝えた上で介護や販売員の仕事に就いてきたが、6年前に結婚したのを機に退職。2年前に長男を出産した。4月からは保育園に長男を預け、再就職に向けて活動中だ。
島本さんは「子どもが大きくなれば、母親のてんかんについて周囲から話を聞くこともあるでしょうが、現状は間違った情報も多い」と指摘。「私自身が堂々と病気を公表して生きて、息子が大きくなるまでに正しい知識を広めていきたい」との思いを抱いている。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/medical/20120613ddm013100151000c.html
ドストエフスキーはてんかんでした。氏の『白痴』の主人公ムイシュキン公爵もてんかんでした。私の弟(死去)もてんかんで、何度も職を失いました。私は医師でしたが、何も弟の役に立つことができませんでした。今、退職を契機に「ムイシュキン基金」を創設し、運転免許をもたないで就職できるように患者さんの支援のお手伝いをしたいと思っています。が、最初の一歩を何をなすべきなのかが分かりません。ご意見をいただければ、と思います。
中原千恵子
2013年12月22日 6:49 AM
私は会社退職後、介護福祉士として二つの市の社会福祉協議会で障がい者介護に従事しています。私の介護サービスを利用される方の中にも夫原因が糖尿病と硬膜下血腫に因るてんかん発作の障がいをお持ちの利用者がいらっしゃいますが、お二人とも薬できちんとコントロールされています。てんかんに対する偏見とは私も強く戦って行きたいと思います。障害者自立支援法が平成24年に障害者総合支援法と名前を変えましたが、実際は「お役人のさじ加減でお茶を濁して手を抜く」面もあって現場は混乱するばかりです。「見直し3年」の来年は本当に充実したものになるよう、新しい議員さん達にも訴え頑張って行きたいと思います。私はまた中国語通訳案内士もしていて、医療通訳・医学翻訳でてんかんのことも学びました。中国では癫痫(癲癇)と言いますが癫狂(癲狂),癫疯(癲瘋),脑痫(脳癇),羊癫疯(羊癲瘋),羊痫(羊癇),羊羔疯(羊光瘋),羊角风(羊角風),猪脚疯(豚足瘋)等とも呼ばれ、古来よりどんな心神異常障害症状に対しても、甚だしくは神経、筋疾患にも混同使用されています。それも日本に伝わって、偏見を生む一因になったのかも知れません。中国側にも正確に定義し用語使用するように訴えて行きたいと思います。
久保田信夫
2014年11月25日 8:21 PM
先のコメントの中で2行目の「…利用される方の中にも夫原因が…」は「…利用される方の中にも夫々原因が…」の誤りでした。お詫びして訂正します。
久保田信夫
2014年11月25日 8:32 PM