めまいや立ちくらみ、頭痛などの症状に苦しめられる熱中症。気温や湿度が高くなるこれからの季節に発症しやすく、体温調節機能が十分に発達していない子供は特に注意が必要だ。子供の熱中症対策について、昭和大学病院(東京都品川区)総合診療部の森田孝次医師(小児科)に聞いた。
◆発症しやすい
日射病や熱射病など耳になじんだ呼び方もあるが、森田医師は「かつては重症度によって用語が使い分けられていたが、現在は熱中症で統一されている」と説明する。
熱中症は「体温の上昇と、それを抑える仕組みのバランスが崩れた状態」。気温が高かったり運動などで体を動かしたりすると体温は上昇する。通常は汗をかいて蒸発させたり、体表に血液を集めたりして外気に熱を放出し、体温を下げる。ただ、気温や湿度が高い▽風が弱い▽日差しが強い-などの環境で体内の水分や塩分のバランスが崩れると、十分に汗をかけなかったり、血液の流れが悪くなったりして体に熱がこもり、熱中症につながる。
体の成長度合いにもよるが、乳幼児から中学校卒業程度までの子供は、(1)汗をかく能力が未熟(2)運動時に血液が体表に熱を運ぶ能力が不十分(3)体が必要とする水分量が多く脱水状態になりやすい-などの理由から発症しやすいという。大人よりも身長が低いため、地面からの輻射(ふくしゃ)熱の影響を受けやすいのも要因だ。
症状は重症度によってI~III度に分けられる。
最も軽いI度の症状は、立ちくらみやめまい、こむら返り、大量の発汗などで、II度は頭痛や吐き気、嘔吐(おうと)、倦怠(けんたい)感、虚脱感など。III度になると手足の運動障害や意識障害、けいれん、体が熱くなる高体温といった症状が表れる。
森田医師は「小さな子供の場合、自分で症状に気づきにくい。早めに対処するため、『熱中症なのでは』と周囲の大人が疑ってほしい」と強調する。
◆暑さに強い体を
症状に気づいた場合、風通しの良い日陰やクーラーが効いている室内で休ませる。さらに、皮膚に水をかけてうちわなどであおいだり、氷嚢(ひょうのう)やぬれタオルを首の周りや脇の下などに当てたりして体を冷やす。同時にイオン飲料や(脱水症状の治療などに用いられる)経口補水液などで水分・塩分を補給する。「水を飲ませながら塩を少しなめさせる」方法でもいいという。
症状は悪化する可能性がある。乳幼児の場合は必ず、それより大きい子供でも、II、III度の場合は病院へ行く。特に意識障害や嘔吐、けいれんなどが見られる場合は「すぐに救急車を呼んでほしい」(森田医師)。
熱中症の予防には、(1)こまめに休憩を取り水分補給する(2)帽子をかぶり、通気性が良く、熱がこもりにくい明るい色(白や黄色など)の服を着る(3)「早寝・早起き・朝ご飯を食べる」の規則正しい生活を守る-のがポイントだ。また、普段から朝夕の涼しい時間帯にじっくり汗をかくような運動を行い、暑さに強い体を作っておきたい。森田医師は「子供の場合、外で元気に走り回って遊ぶことが大切」と話している。
■自動車内への放置 短時間でも絶対ノー
熱中症対策としては、自動車内への子供の放置にも注意が必要だ。
日本自動車連盟(JAF)が平成19年4月に行ったユーザーテストで、外気温が最高23・3度のとき、車内温度は最高48・7度を記録。18年7月に行った夏場のテストでは、30度超の外気温の中で車内温度は50度を超えた。エアコンを使用していても40度近くになった。
昭和大学病院の森田医師は「命にかかわる重症の熱中症になる危険がある。短時間でも車内に放置してはいけない」と警告している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120606-00000528-san-soci