認知症の配偶者や親に付き添ってトイレを利用する際、周囲の誤解を避け、介護中であることを周りに知らせる「介護マーク」。公益社団法人「認知症の人と家族の会」県支部(糸魚川市)がマークの周知に取り組んでいる。妻や母親の介護で男性が女性用トイレに付き添うケースなど異性間の介護では、トイレなど場所によっては不審がられるケースがあるためだ。代表の同市竹ケ花、金子裕美子さん(60)は「介護者への精神的負担を減らしたい」と話す。
「認知症の妻の介護で、女性用トイレを使っていたら、不審者と間違われ、警備員に通報された」
介護マークは、静岡県の男性介護者から、こんな切実な訴えを受けた同県が昨年4月、作製した。同県は同12月、介護マークを全国に普及させるよう厚生労働省に要望。同省も都道府県に普及を促す通知を出した。
同省が10年に実施した国民生活基礎調査で、誰が主な介護者を務めているか調べたところ、同居中の親族が64・1%で、そのうちの30・6%が男性だった。介護者の3人に1人が男性の時代。金子さんは「親の介護は自分でしてほしい」と夫が妻から求められたり、非婚化に伴い、50~60代の独身男性が親を介護するケースが増えているという。
「女性用トイレには入りにくい」「女性用の下着を買うのが恥ずかしい」。男性介護者の悩みは金子さんの耳にも入ってくる。家族の会県支部は昨年夏、同会静岡県支部から介護マーク入りカード100枚を受け取り、男性介護者に配った。
だが、トイレ介護では、ネームプレートのように首から下げたカードでは目立たない。このため新潟県支部は同12月、県の補助を受け、背中に大きく介護マークを記したチョッキ80枚を新たに作った。今年1月から希望者に無料で貸し出しを始め、既に40枚以上が利用されている。
金子さんは89年、同居していた義父が脳梗塞(こうそく)と共に軽い認知症になり、亡くなるまでの9年間介護した。
6年前には夫慶徳さん(67)が脳梗塞で倒れ、左半身マヒと高次脳機能障害が残った。慶徳さんの外出時は、金子さんが男性用トイレで世話をする。「男性よりは抵抗が少ないかもしれないが、やはり男性用トイレに入るのにはためらいがある」と打ち明ける。
介護マークは認知症以外の介護でも使える。金子さんは「県はもっと積極的に周知や普及を図ってほしい」と呼びかける。チョッキやカードの貸し出しなど問い合わせは、同県支部(025・550・6640)。
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