12歳以下の子供にとって、電子機器を使用して同時に複数の行為を行うことは、社会的・情緒的発達に悪影響を及ぼす可能性があることが、新たな調査で明らかになった。そのシンプルな対処方法は直接会話することだという。
動画の視聴、電子メールやチャット、ビデオゲームなどにどのくらいの時間を費やしているかと、どのくらいの頻度で2つ以上の行為を同時に行っているかをオンラインアンケートで回答してもらった。
調査結果は、発達心理学の専門誌『ディベロップメントサイコロジー』に掲載された。それによると、電子機器を使用して同時に複数の行為を頻繁に行ったり、画面に長時間向かっている子供は、情緒的・社会的健康状態が芳しくないことが判明した。
そうした子供は社会的自信があまりなく、普通であると感じられなかったり、親から見て悪影響を及ぼすとみられるような友達が多かったり、睡眠時間が少ないなどの傾向があるという。また、ネットやテレビで漫然と映像を視聴する行為も、ネガティブな健康指標と強い関連性があることも分かった。
調査論文の共同著者、スタンフォード大学のクリフォード・ナス教授(コミュニケーション学)とロイ・ペア教授(教育学)は、電子機器の複数同時操作は「情緒や発育に深刻な影響」をもたらす可能性があると話す。
ただし、ナス教授は、電子機器の複数同時操作と情緒的健康の悪化には密接な相関関係があることは明らかになったが、その因果関係は証明できなかったとした。また、どのくらいの時間人と直接接するのがいいのかや、電子機器の複数同時操作をどの程度行うと有害なのかも特定できなかったとした。
だが、特に思春期直前の数年は社会的・情緒的発達にとって非常に重要であるため、今回の調査結果は大きな懸念だ、とナス教授は話す。
今回の調査では、友人や親、兄弟姉妹とどのくらいの時間面と向かって会話しているかも尋ねた。その結果、対面式のコミュニケーションが多い子供ほど睡眠時間が長く、社会的自信にあふれ、親から見て悪影響を及ぼすとみられるような友達が少ないことが分かった。
また電子機器を使用している時間は1日平均6.9時間だったのに対して、直接人と接している時間は2.1時間であることも明らかになった。さらに、対面式のコミュニケーションが多い子供は、たとえ電子機器の使用頻度が高くても、社会的・情緒的健康状態が良好であることも明らかになった。
研究者らは、その原因として、子供は相手の顔を見て感情を判断することを学び、それによって社会的な自信をつけていくためではないかとみている。またスカイプなどのサービスを使用したビデオ電話では、直接会話するときと同じ効果は得られないようだ。ナス教授によると、ビデオ電話は、ウェブの閲覧など別の行為をしながらすることが多いためだという。
また常にスマートフォン(高機能携帯電話)の画面を見つめている友人や親に囲まれて育った子供も、やはり感受性が乏しい傾向があるという。
「昔はよく『人の話しを聞くときは相手の顔を見なさい』と言われたものだが、今はみな端末を見ている。それでは相手の言うことは聞こえても、声の調子や顔の表情、ジェスチャーは見逃してしまうため、相手の感情を読むのが下手になってしまう」と、ナス教授は指摘し、「最大の問題は、対面式のコミュニケーションは極めて重要であるにもかかわらず、子供同士でも家族間でもそれが大幅に減っているということだ」と述べた。
さて読者の子供はどうだろうか。電子機器の使用にどの程度の時間を費やしているだろうか。また対面式のコミュニケーションをどのくらいしているだろうか。子供と直接会話することを心がけているだろうか。あるいは、子どもと同じく自分もチャットや電子メールばかりしていないだろうか。
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