発達障害と就労支援の現実
第6回 発達障害者に対する雇用支援施策
滝田誠一郎 たきたせいいちろう
ノンフィクション作家/ジャーナリスト
前回は発達障害の特性やライフステージに応じた支援(早期発見・早期支援、就労支援、生活支援など)を明文化した法律「発達障害者支援法」について解説したが、今回は、行政が具体的にどのような支援施策を展開しているのか、その全体像を見ていくことにする。
■発達障害者を対象にした雇用に関する国の支援施策
発達障害者を対象にした雇用に関する国の支援施策は、大きく以下の四つがある。
(1)若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム
ハローワークにおいて、発達障害等の要因により、コミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、その希望や特性に応じて、各専門支援機関(地域障害者職業センターなど)に誘導するとともに、障害者向けの専門支援を希望しない者についてはきめ細かな個別相談、支援を実施する。
(2)発達障害者の就労支援者育成事業
発達障害者支援関係者等に対して就労支援ノウハウの付与のための講習会および体験交流会を実施するほか、事業所において発達障害者を対象とした職場実習を実施することにより、雇用のきっかけ作りを行う体験型啓発周知事業を実施。
(3)発達障害者雇用開発助成金
発達障害者の雇用を促進し、職業生活上の課題を把握するため、発達障害者について、ハローワークの職業紹介により雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に助成を行う。
(4)発達障害者に対する職業リハビリテーション支援技法の開発および地域障害者職業センターにおける試行実施
発達障害者の雇用促進に資するため、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センターにおいて発達障害者の就労支援に関する研究を行うと共に、発達障害者に対する職業リハビリテーション支援技法の開発およびその蓄積を図る。また、これらの技法開発の成果を活用し、地域障害者職業センターで発達障害者に対する専門的支援の試行実施を行う。
■障害者全般を対象にした雇用支援施策
これとは別に、障害者全般を対象にした以下の雇用支援施策も利用することができる。
(1)ハローワークにおける職業相談・職業紹介
個々の障害に応じた、きめ細かな職業相談を実施すると共に福祉・教育等関係機関と連携した「チーム支援」による就職の準備段階から職場定着までの一貫した支援を実施。合わせてハローワークとの連携の上、地域障害者職業センターにおいて職業評価、職業準備支援、職場適応支援等の専門的な各種職業リハビリテーションを実施する。
(2)障害者試行雇用(トライアル雇用)事業の推進
事業主に障害者雇用のきっかけを提供するとともに、障害者に実践的な能力を取得させ、常用雇用へ移行するための短期間の試用雇用を実施して、障害者雇用を促進する。
(3)精神障害者等ステップアップ雇用奨励金
一定限度の期間をかけて段階的に就業時間を延長しながら常用雇用を目指す「精神障害者等ステップアップ雇用」に取り組む事業主に対し奨励金を支給。
(4)福祉施設の人材を活用したジョブコーチ支援の充実
福祉施設の職員が行うジョブコーチ支援について、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の支給を行うことにより、福祉施設のノウハウを生かした効果的な職場適応援助を行う。
(5)障害者就業・生活支援センター事業の拡充
雇用、保健、福祉、教育等の地域の関係機関ネットワークを形成し、障害者の身近な地域においても就業面および生活面における一体的な相談・支援を行う「障害者就業・生活支援センター」の設置箇所数を拡充する(平成23年4月現在300センター)
「これらの支援施策は障害者手帳を持っていない人でも使うことができます。私どもが“発達障害者”という場合は、手帳の有無ではなく、発達障害という診断を受けた方が対象になりますので」(厚生労働省 職業安定局 高齢・障害者雇用対策部 障害者雇用対策課 地域就労支援室 秋場美紀子室長補佐)
http://news.goo.ne.jp/article/jinjour/bizskills/healthcare/jinjour_50971.html