東日本大震災の後、各地で孤児の「里親になりたい」という希望者が増えている。
震災を通じて、絆や助け合いの大切さが改めて実感されたのだろう。これまで十分には知られていなかった里親制度を周知する機会としたい。制度を一層充実させる必要がある。
親が養育出来ない子を、自治体から委託を受けた里親が育てるのが里親制度だ。5日間ほどの研修を受けて審査に合格すると里親として認定、登録される。養育中は手当などが支給される。
両親の死亡や離婚、親による虐待など様々な理由で、親が養育出来ない子供たちの数は約4万7000人に上る。90%が児童養護施設や乳児院などに預けられ、10%が里親に委託されている。
こうした子供たちを可能な限り温かい家庭的環境の下で育てていくことは、心の成長の上でも重要なことだ。
しかし、日本では長年にわたり施設委託に重点が置かれてきた。欧米諸国の里親委託率は、米国76%、フランス53%などで、日本の比率の低さが際立っている。
厚生労働省が昨年、今後は里親委託を優先して検討する方針を示したのは妥当である。児童虐待が急増し、児童養護施設が満杯状態であることも背景の一つとなっており、厚労省が里親委託率30%を目標に掲げたのも理解できる。
制度拡充のためには、里親の確保に加え、委託後の支援体制を強化していくことが必要だ。
東京都杉並区では、里親の女性が、里子として養育中の3歳の女児に暴行を加え死亡させたとして、昨年9月に傷害致死罪で起訴された。女性は自身のブログに養育の悩みを書き込んでいたが、事件を未然に防げなかった。
子供たちが心に傷を負っているため、養育にきめ細かな配慮が求められるケースも少なくない。
厚労省は今後、全国で700人の里親支援の専門職員を児童養護施設などに配置する。
里親が悩みを抱え込まないよう定期的な家庭訪問を行ったり、里親同士の交流の場を広げたりすることも欠かせない。里親研修の充実も必要だ。
里親を経て養子縁組するケースもある。愛知県では、望まない妊娠で悩む女性のため特別養子縁組などを前提とした新生児の里親委託に30年前から取り組んできた。出会いが早いほど、自然な形で親子関係を作ることが出来る。
こうした取り組みも積極的に進めていくべきだろう。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/bizskills/healthcare/20120106-567-OYT1T01255.html