酒類販売の規制緩和の影響で、酒売り場であることを明示せずにアルコール飲料を販売し、国税当局から指導を受ける小売店が急増している。大阪国税局の指導件数は、この4年間で約4倍に増加した。缶のデザインがジュースとよく似ているため子供が誤って飲んでしまうケースもあり、消費者団体も指導強化を要請。不況や東日本大震災の影響で「家飲み」が流行する中、特に酒の販売量が増える年末年始に向けて国税当局は監視を強めている。
「8歳の娘が缶入りサワー飲料を飲んでしまった。スーパーで、ジュースと間違えて棚から取ってしまったようだ」。国民生活センターによると、平成21年4月、保護者からこのような情報が寄せられた。同じブランドのジュースと外観が似ていたため、缶についた「お酒」の表示に気付かなかったという。
同様の誤飲事故が相次いだことから、消費者団体「主婦連合会」(東京)などは昨年7月と今年2月、缶入りアルコール飲料とジュースのデザインや陳列場所を明確に分けるよう指導を求める要望書を、国税、消費者両庁に提出した。
国税庁は「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」を定め、酒売り場と明示することに加え、客が20歳以上と確認できない場合には販売しないと表示することを義務付けている。しかし、表示違反は後を絶たない。
大阪国税局の調査によると、近畿2府4県の表示違反は、18年度の416件に対し、19年度は768件に増加。20年度は622件といったん減少したものの、21年度は1257件に激増し、22年度は1583件で、過去4年間で約4倍に迫る勢いだ。
仏ワイン「ボージョレ・ヌーボー」の特設売り場に「酒売り場」の表示をしていなかったケースなど期間限定の売り場での違反が多かったという。
違反が急増している背景には、18年の酒類販売の規制緩和がある。これによって、新規参入するスーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどが急増。酒を扱う小売店が増えたことに加え、スーパーやコンビニでは店員の大半をアルバイトやパートが占め、表示義務そのものを知らないことが多いのも一因だという。
表示違反に対し、国税当局は「指示」「業者名の公表」「命令」などの措置をとることが可能だ。店側が命令に従わなければ、50万円以下の罰金のほか、酒類販売業免許を取り消すこともできる。
大阪国税局の担当者は「酒の需要が高まる年末年始に向けて臨時や特設の酒売り場が増えることから、従来以上に適切な表示に努めてほしい」と呼び掛けている。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/bizskills/healthcare/snk20111227113.html