◎1万3513世帯に避難勧告
十二日夜から梅雨前線の影響で降り始めた強い雨は十三日、中、下越地方で猛威をふるい、栃尾市で同夜までに四〇〇ミリを超えるなど記録的豪雨になった。三条市や栃尾市、見附市などの信濃川本支流域、五泉市や東蒲の阿賀野川流域で堤防の決壊、増水で床上、床下浸水が県内で計七千五百三十九棟の被害が出た。土砂崩れなどで二人が死亡、一人が行方不明。避難勧告・指示は三条市や見附市など十二市町村で計一万三千五百十三世帯に及び、避難者は三条市で四千五百六十二人、南蒲中之島町で千二百二十二人に上った。交通網も寸断された。県の派遣要請に基づき、自衛隊が長岡、見附市など被災地に出動。また、県は同夜、消防庁に緊急消防援助隊の派遣を要請した。
◎小中学校高校で児童・生徒待機
集中豪雨のため十三日午後九時半現在、県内では見附市、三条市、南蒲中之島町など五市町村の小・中学校十五校に、千百九十五人が帰宅できず学校にとどまっている。 県教育委員会によると、小学校八校に五百二十七人、中学校七校に六百六十八人が待機。このうち十校では、学校が避難所であるため、保護者とともに宿泊をする。 一方、長岡、栃尾、三条の三市の高校七校でも、午後六時四十五分現在で、生徒二百六十五人が学校での宿泊を決めた。
◎さらに豪雨の恐れ 県内は十二日夜から、中、下越地方を中心に局地的に記録的な集中豪雨となった。最も激しい降雨となった栃尾市の十三日午前零時―午後八時までの降水量は四一四ミリで、日降水量(零時―二十四時)で統計を取り始めた一九七九年以降、県内過去最高となった。十四日も昼すぎまで中、下越地方で激しい雨が予想され、新潟地方気象台は厳重な警戒を呼び掛けている。 同気象台によると、日本海から県内に伸びた梅雨前線が停滞。南からの温かく湿った空気と大陸方面からの冷たい空気が県内上空に入り込み、大気の状態が不安定になって積乱雲が続発、局地的に持続して大雨を降らせた。 十四日も梅雨前線が日本海から県内に停滞、再び活発化するもよう。同日昼すぎまで、新潟市や五泉市、長岡市などを中心に一時間に三〇―五〇ミリの非常に激しい雨が降り、多いところでは降り始めからの総雨量が五〇〇ミリを超えるところもある見込み。 中、下越地方、福島県会津地方では過去数年間で最も土砂災害の危険性が高まっているほか、河川の水位も上がっているため、同気象台は土砂崩れや河川のはんらんなどに警戒するよう注意を喚起している。
◎三条市の堤防決壊
三条市内では十三日午後一時過ぎ、同市諏訪新田の五十嵐川左岸の堤防が七十メートルにわたり決壊、濁流が同川南部の嵐南地区に広がった。決壊現場に近い月岡小学校は水に囲まれて孤立、児童や避難住民ら約千人が足止めされ一泊することになった。 川の流れが強く、同日夕には決壊部分が広がるなど本格復旧作業に入れないため、決壊現場まで重機を入れるための工事などが夜も行われた。 同市は午後四時半、同地区の全世帯一万五百五十五世帯に避難勧告を出した。また、災害対策本部を発足させた。
◎避難所で不安な一夜
三条市内では小中学校や高校など市が指定した避難場所や、住民が自主的に集まった企業などの自主避難先、合計五十カ所余りで約五千二百人が不安な一夜を過ごした。 午後七時ころから市による炊き出しのおにぎりなどが住民に配られ始めた。同市元町の三条小学校体育館には百六十人余りが避難。着替えや食べ物など大きな荷物を持ち寄った人たちは横になったり、肩を寄せ合って話したりしていた。 同市西四日町の女性会社員(49)は「自宅の一階は胸あたりまで水が入っていて入れない。両親と夫、中学生の子どもが二階に取り残されていて心配です。明日朝一番に自宅の様子を見に行きます」と疲れた表情で話していた。 一方、南蒲中之島町中野中の地域福祉センターには約百人が避難。二階ホールでは、住民たちが落ち着かない様子で横になったり、顔見知りと話をしたりしていた。小根山順子さん(36)は「家の周りの田んぼがどんどん水かさを増した。突然のことでまだ信じられない。早く家に帰りたい」と話していた。 見附市の今町小体育館は約一千人の住民で埋まった。同小校長が「避難勧告はまだ続いています」と状況を説明するたびに、落胆したため息が漏れた。同市三林の男性(61)は「もっと雨が降ったらどうしようか」と不安そうに話していた。 長岡市浦瀬町の山本コミュニティーセンターには百数十人が避難。同地区では数世帯が孤立、救助を待っていることもあり、住民たちは疲れ切った表情で事態を見守っていた。