広島市は、高機能携帯電話「スマートフォン(スマホ)」を活用した救急搬送をスムーズに行うシステムを導入した。
■「受け入れ可」病院一目で
病院側は、救急患者を受け入れられるかどうかを端末に入力。救急隊員は画面を見ることで受け入れ可能病院が一目で分かるため、救急車内で病院を探す時間の短縮になるという。スマホを使ったシステムは全国的にも珍しいといい、搬送の迅速化が期待される。
市消防局によると、これまで隊員が患者の受け入れ先を探す場合、救急車内から電話で病院側と交渉。119番を受信、出動してから患者を病院に搬送するのにかかった平均時間は、2010年は33・8分で、00年より約10分増。病院との交渉回数は、09年の1・39回から、10年は1・48回で、いずれも増加傾向を示している。また、10年の救急搬送患者数4万5071人のうち、交渉が4病院以上だった患者は2558人(5・7%)いた。
病院側が「満床」や「処置中」で患者を受け入れられないにもかかわらず、隊員に伝わっていないことで搬送時間が長くなるケースもあることから、ロスを減らすシステムを県が構築、同局で運用することにした。
システムの名称は「救急医療コントロール機能」。救急車などに40台、救急を受け入れる38病院に各1台のスマホを配備。病院側が受け入れ可否の最新情報を入力する。隊員がスマホで「地域」と、外科や内科などの「科目」を選択すると、画面には該当する病院と「受入可」や「交渉中」などの状況が表示され、隊員は無駄な電話をしなくて済む。同局の松永真雄救急課主査は「1回の交渉には、数分かかる。システムの導入で、搬送時間が短縮され、1秒でも早く病院に到着できれば」と話している。
また、病院側にもメリットがあり、端末に「1時間後に受け入れ可能」「満床」などの情報を示せるため、受け入れができない時にかかってくる電話が減り、負担が軽減されるという。
さらに、市はシステムと連動し、24日からは内科系、脳神経外科系の患者を中心に、4か所の病院で受け入れを断られた場合、いったん市立広島市民病院で受け入れる制度を始めた。広島市民病院への搬送後に病状が落ち着けば、27の病院が当番で確保している空きベッドに患者を移す。市は空床確保の補助として、当番病院に1床当たり上限約3万円を交付する。
今後、広島市民病院は受け入れ科目を増やしていく方針。同病院では、救急患者の処置台を7台から13台に増やすなど、救急医療の体制を整える。(杉山弥生子)
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