夕方、長岡市北図書館を出た時、中越高校の建物の横にきれいな夕日が見えました。
最近、雨が多かったので、久しぶりにあのオレンジ色の大きな夕日を見ました。
するとカラスが「カァ,カァ」と鳴きました。
少し肌寒い風が吹き、キンモクセイの香りがしました。
まさに日本の秋です。
肌が冷えるくらいに冷たい夕風が吹き、キンモクセイの香り、稲刈り後の田んぼを焼いた匂いがする
と友達と田んぼで三角ベースをしたこと、せつない恋をしたこと、ビールから日本酒に変わったこと、
自分の成長とともに変化してきた秋の思い出が甦ります。
そして、今日も何か物悲しいような、昔の切ない恋心を思い起こすような気持ちになりましたが、
それは決してマイナスなものでなく、日本の秋を感じた喜びを感じるものでした。
そして、これが清少納言の枕草子に出てくる「秋は夕暮れ」であり、「あはれなり」なのだなと思いま
した。
1000年前の人間の感覚を理解できたのも自分が彼女と同じ日本人だからなのでしょう。
民族と言うといろいろと語弊はあるかも知れませんが、同じ風土に生きる民族の感覚は時空を超える
ということであり、この時空を超えた感覚を「情緒」と呼ぶべきなのでしょう。
ベストセラーにもなった藤原正彦さんの「国家の品格」にも日本人の情緒は自然や美への感受性
が強いとあり、世界に通用する普遍性のある大切なものであり、今の日本に必要なものだと書いて
います。
情緒が、我々日本人の生活や文化の原動力となっていることは間違いのないことで、この情緒を
育てていくことが大切だと思います。それは決して同じものを見て、同じ感覚を持てというのではなく、
自然や人の何気ない営みにふと耳目を傾けるということだと思います。