東日本大震災の発生から3日たった14日、被害が比較的小さく停電も復旧して普段の生活に戻ったように見えた県内でもじわじわと影響が広がり始めた。物流のストップに加え被災地への重点配分もあってスーパー、量販店などでは食品や日用品が次々と売り切れ、ガソリンスタンドも在庫切れが続出。開店しているスタンドには車の長い行列ができた。東北電力は計画停電を検討しており、県民の生活に影を落としそうだ。
大震災の後商品が届かなくなった県内のスーパーは棚の空きが目立つようになり、関係者から悲鳴が上がる。
ナイス本部(秋田市)は「在庫状況は非常に厳しい。どんどんものがなくなっていき、今後入荷の見通しもない」。いとく本社(大館市)によると、ペットボトル入りの水や即席めん、パンなどを買い求める人が多く生鮮品も不足気味。「手配できる商品は各店舗に幅広く届けたいが、潤沢には行かない。品が被災地に流れている可能性もある」と指摘した。
秋田市によると、市中央卸売市場への生鮮品の入荷量が青果物が1割、水産物は4割減。市は市場参加業者や大手スーパー、コンビニチェーンに食品確保を要請した。
同市八橋南のヤマダ電機テックランド秋田本店には、電池やラジオ、使い捨てカイロなどを買い求める客が相次いで訪れた。地震前は300~500パックずつあった各サイズの乾電池は、単4がわずか50パック残るだけに。青木裕史チーフフロアー長は「これまで宮城、岩手を経由して仕入れていたので、入荷の見込みはない」。懐中電灯用の電池を買いにきた秋田市の男性(63)は「電池がなくなり余震などに備えようと思って買いに来たが、手に入らなかった」と戸惑った様子だった。
佐竹敬久知事は14日の会見で、食品確保の見通しについて「不足するのは(仙台方面から他の経路に)物流が切り替わるタイムラグとなる1、2週間ほどの期間ではないか」との見通しを示した。
◇ガソリン入手困難に
秋田市八橋南のガソリンスタンドは14日、レギュラーガソリンを1人2000円分(13・5リットル)に制限して販売。約50台が行列を作り、午後3時にはすべて売り切れた。同店担当者によるとガソリンなどは千葉県の製油所から運んでいるが、地震の影響でオーナーから「入ってくる見通しが立たない」と連絡を受けているという。
順番待ちをしていた秋田市の40代の男性会社員は「営業で車を使うのでガソリンがないと仕事にならず仕方がない」と声を落とした。
県によると、県内で流通しているガソリンの仕入れ先は系列によって異なり、仙台市方面から仕入れている場合は供給は厳しい状況だという。
◇飼料不足の恐れも
震災により牛や豚、鶏などの飼料の生産が止まり、県内の畜産業が「えさ不足」に陥る恐れが出てきた。
県畜産振興課によると、県内の家畜は飼料を他県に依存しており、生産工場は青森県八戸市や岩手県釜石市、宮城県石巻市など震災で大きな被害を受けた地域が多い。同課は「各工場と連絡が取れず、復旧が進んでも当面は生産もできないと思う」と話す。情報収集を進め、今後は被害を受けていない地域などからを入手する必要があるとしている。
飼料が欠乏した場合、家畜の肥育ができなくなり、死んでしまう恐れもある。
養豚が盛んなJAかづの(鹿角市)の担当者は「飼料は工場から毎日のように送られてきていた。生産者には3、4日程度の備蓄しかない」。農家からは「飼料確保を急いでほしい」という声が寄せられ、飼料の消費を抑えるために通常より早期の出荷をしている。
一方、比内地鶏が飼育されているJAあきた北央(北秋田市)は14日に業者から北海道で飼料を確保できたと連絡があり「当面の心配はなくなった」と安堵(あんど)していた。
由利本荘市で酪農を営む県酪農連盟の柴田輝男会長は「牧草はあるが濃厚飼料が足りなくなったので、量を減らして少しずつ与えている」と話す。今後は被害のない新潟県などの業者を探して飼料を購入する予定だが、県内では14日まで製乳も止まり、製品化できない牛乳を生産者が処分した。
◇安否確認ダイヤル、問い合わせ117件
県内から被災地に出かけた人の安否確認のために県が設けたチームには、14日午後5時までに117件の問い合わせが寄せられた。連絡がつかないのは311人で、うち31人は無事が確認された。「県出身で被災地に住んでいる親類や家族と連絡がとれない」との内容が多かったという。
同チームの直通電話番号は018・860・4561または018・860・4583。
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