数年前、妻の新盆で新潟の実家に帰省した時のことです。
私の実家の墓は本家の裏の畑の奥にありました。
私は予定よりも仕事が長引き、午後10時近くになってようやく墓地の近くまでたどり
着きました。
時刻が遅かったので、本家に挨拶もせずに畑の裏側から墓地に入りました。
子供に数珠と線香を持たせて、妻が眠る墓の前に歩み寄りました。
蝋燭に火を灯そうと、ライターに火を点けた・・・その時です。
墓の脇に小柄なお婆さんがちょこんと立っていました。
「よくきたねぇ・・・お母さんがお待ちかねだよ・・・」
優しい声で語りかけるお婆さんに対して、不思議に怖い印象は受けませんでした。
「は・はい・・・お世話になります・・・」
私たちはお婆さんの指示に従い花を供え、蝋燭に火を灯して手を合わせました。
顔をあげるとお婆さんはいなくなっていました。
狐につままれたような気分でそのまま実家に向かいました。
「あのお婆さん・・・誰かなぁ?、どっかで見た顔なんだよね、本家のお婆ちゃんかな
?」
私の両親は黙って私の話を聞いていました。
私の父がポツリと言いました。
「お前に言わなかったかな・・・本家のお婆ちゃんはもう何年も前に・・・」
翌朝、朝一番に私が本家の仏壇をお参りに行ったのは言うまでもありません。
コメント (1)
続きです。
翌朝、私は子供を連れて本家の仏壇をお参りに行きました。
旧家らしく、ずらりと並んだ先祖の肖像画や写真…その中に昨夜のお婆さんの写真を探しました。
似ているようで、どうも違う…
「昨日は遅くにご苦労さま」
声の方を振り向くと、お茶を運んできたのは昨夜のお婆さんでした。
お婆さんと思ったのは本家のお母さんでした。
本家のお母さんもいつのまにかそんな年になっていたんですね(笑)。
昨夜は墓場の火の後始末をされていたのだそうです。
投稿者: skyMax | 2008年08月13日 10:25
日時: 2008年08月13日 10:25