東日本大震災の被災地で、血管の病気「急性大動脈解離」の患者が、震災前に比べて2・2倍に増えたことが岩手県立中央病院(盛岡市)の医師らの調査でわかった。
ストレスによる血圧上昇が原因とみられ、患者数のピークは震災後3年目だった。京都市で開催中の日本心臓血管外科学会で18日に発表する。
同病院で緊急手術を受けた患者数を震災前後で比較した。震災前の3年間は23人だったのに対し、震災後3年間は50人に増えた。震災後1年目は7人だったが、2年目は20人、3年目は23人と急増した。患者はほぼ全員が県内在住で、40歳代と若い人もいた。調査した小田克彦医師(心臓血管外科)は「生活不安などストレスを受け続けた結果、血圧が徐々に上昇し、発症したのでは」と分析する。
1995年の阪神大震災や2004年の新潟県中越地震では被災直後に、避難生活でのストレスなどが原因で心筋梗塞などの心臓病が急増したことが知られている。小田医師は「被災直後に目立つ心臓病だけでなく、長期のストレスで起きるような大動脈解離にも備え、被災者の血圧検査など予防や治療の体制を整備する必要がある」としている。
急性大動脈解離 心臓につながる大動脈の壁の内側に裂け目ができ、血液が流れ込み、血管の壁の一部が膨らむ状態になる。高血圧による動脈壁の劣化が要因の一つとされ、手術では膨らんだ部分を切除して人工血管に置き換える。
(2015年2月18日 読売新聞)
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