宮崎県は今月から理美容師を対象に、自殺の兆候に気づき、専門家への橋渡し役を担う「ゲートキーパー」(GK)の養成講座を始めた。
接客の機会が多い職種の人に相談者のSOSを捉えてもらい、自殺防止につなげることが期待されている。
「仕事がなかなか大変で、お酒を飲んでも眠れなくて……」「それはつらいですね。一度、相談窓口に電話してみたらどうですか」
9日に高鍋保健所で開かれた養成講座。担当者が児湯郡の理容師15人を前に、心情を受けとめつつ相談先を紹介する流れを実演しながら説明した。
受講後、高鍋町の理髪店店主(71)は「体調不良などの異変に気づけるよう何気ない会話でも意識して耳を傾けたい」と語った。
GKは法的な専門資格ではないものの、国の「自殺総合対策大綱」では、市民一人ひとりが自殺防止に必要な知識を身につけ、GKとして活動することを掲げている。県内でも一般向けの養成講座を開く市町村が増えているという。
県福祉保健課は「GKに特別な能力は必要ない。接客業など各業界に協力を呼びかけていきたい」と話す。
◆全国で9番目の高さ
県によると、県内の自殺者数は2007年の394人をピークに減り、13年は256人だった。人口10万人当たりの自殺率は22・9人で、全国で9番目に高かった。
性別では男性の割合が高く、女性の2・3倍。働き盛りの30~60歳代が7割近い。男性は自尊心が高く、悩み事を抱え込む傾向があるという。女性は子どもの独立や夫に先立たれた孤独感からか、70、80歳代が多くなっている。
自殺の動機は健康問題が8割弱と最も高く、このうちうつ病などの精神疾患が5割強を占める。職業別では失業者や主婦ら無職者が6割近くになっている。
県は自殺率を05年の30・6人から、16年までに25%以上減らす目標を立てている。全国より高い自殺率について、県福祉保健課は「自殺の原因は複合的。経済や健康面などの幅広い対策が求められる」と話す。
電話相談や自殺者遺族の集会を行っている宮崎自殺防止センター(宮崎市)所長の大迫恒作さん(43)は「自殺の兆候を見つけることは、人を思いやる社会づくりにつながる。社会全体で向き合うことが必要」と強調する。(小林隼)
(2015年2月17日 読売新聞)
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