昨年1年間に京都府警が把握した振り込め詐欺など府北部での特殊詐欺の被害額は、2年ぶりに1億円を超えた。高齢化が著しい地方では、1人暮らしのお年寄りを狙った不審電話も後を絶たない。各業界は連携を強化し、未然防止に乗り出している。
男「私も金融庁の人に言われてお金を下ろしてきたんです」「100万円必要ですが、60万円しかないなら一刻も早く片を付けないといけないんです」「宅配便で送って下さいね」
口調は優しく丁寧で高齢女性に親身になって語り掛け、東京方面の送り先を伝える。福知山市内で実際にあった特殊詐欺を仕掛ける電話の生々しいやりとりだ。1月末の「福知山市特殊詐欺被害防止ネットワーク会議」で公開された。金融やコンビニ、宅配など16団体と結成した福知山署は「まず実態を受け止めてほしい」と強調する。
警察の危機感は強い。特殊詐欺の被害額が全国で過去最大となる中、府北部でも前年より2700万円増の1億1148万円となった。被害件数は20件で、このうち福知山は9件を占め、被害額も倍増した。だが、摘発は1件のみ。犯行グループにたどり着けない厳しい実情がある。
手口はさまざまだ。金融機関のATM(現金自動預払機)で振り込ませる「振込型」や犯人とじかに接触する「手渡し型」に加え、近年、特に急増したのが現金をゆうパックや宅配便で送らせる「送付型」だ。
このため関係者は水際対策に力を入れる。
金融機関は高額な現金を引き出す人に対し、小切手の発行を勧めたり、アンケート用紙を渡して特殊詐欺の可能性の有無を確認したりしている。京都北都信用金庫大江町支店(福知山市)では昨年12月、職員が顧客の不審電話の内容を聞き出し、被害を防いだ。ただ、具体的な使い道を話されると疑えないジレンマもある。高橋秀樹支店長は「金額の大小問わず相談してもらいたい」と訴える。
宅配便やメール便、ゆうパックを扱うコンビニ業界も対策強化に動く。送付型の被害を防ごうと伝票の品名に書籍、菓子などの記載があれば客に声をかける。不審な反応があれば警察に通報する。京都府コンビニエンスストア防犯協議会の荒川法行会長は「目を凝らして被害を防ぎたい」と力を込める。
福知山のネットワークは今後、老人クラブや婦人会などによる身近な声掛けといった取り組みを地域で進めるという。とくに高齢者を狙った特殊詐欺被害は、老後のために大切に積み上げられた財産を一瞬で奪ってしまう。被害根絶に向けた注意喚起や自衛強化など一層の取り組みが求められている。
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