4月1日、消費税率が8%に引き上げられた。その結果、缶ジュース、大学の学費、牛丼やヨーグルト、郵便料金など日用品の値上げが相次ぎ、11月17日に発表された2014年7月ないし9月のGDPの成長率は年率で-1.6%にもなった。
安倍晋三首相は18日夜、首相官邸で記者会見し、法律で来年10月と定める消費税率10%への引き上げを17年4月まで先送りする考えを明らかにした。しかし、近い将来、消費税が10%になる日がやってくることには変わりない。消費税10%を免れられないとしても、消費税の引き上げを国の財政状況の向上に活かせなければ、福祉も充実せず、GDPの成長率も伸びない。国民が消費税の引き上げに納得するには、国の財政状況が目に見える形で向上し、GDPの成長率に利益が還元される必要がある。
国の財政は確かに切迫した状況にあり、14年の年度末には国債残高は780兆円に上る見込みであるから、消費税の引き上げは不必要なことではない。しかし、消費税を10%に引き上げるだけではこの780兆円にも及ぶ負債は到底解消できない。安倍首相は18日、所得が低い人や省エネ住宅を新築した 人に商品券などを配り、個人消費を直接支援するとしているが、そのような一時的な景気対策に国の財政を消費する余裕はないはずだ。
現在の国の切迫した財政状況を生み出した大きな原因の一つに高齢者の増加による社会保障費の増大がある。日本は、国の財政状況を健全化するために、高齢化社会から脱却する必要がある。高齢化社会から脱却するためには少子化に終止符を打たなければならない。しかし、12年時点で共働き夫婦が59%の日本において現在の少子化対策はおいついていない。
共働きの夫婦が多いということは、出産と同様にキャリアの維持にも力を入れる女性も多いということだ。キャリアを維持するためには、出産のために仕事に就くことのできない期間を最低限にする必要がある。しかし、特に仙台市、世田谷区、横浜市、川崎市、名古屋市、及び大阪市など経済の中心の市区で、保育所は不足しており、数百人の待機児童がいる。このような状況では、共働きの夫婦が2人以上の子供をもつことは経済的にも時間的にも明らかに困難であるから、少子化が急激に進んでいるのもうなずける。
国の財政状況の悪化の原因は一つではない。しかし、消費税の引き上げのみでは国の財政状況の改善につながらないことは明らかであり、国の財政状況の向上につながらない消費税の引き上げには国民も納得できるわけがない。そのため、少子化対策による高齢化社会からの脱却など、長期的な観点から国の財政状況の悪化の原因を抜本的に取り除く政策を迅速に実施するべきである。(編集:久保田雄城)
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