児童の安全を守る各地での取り組み例
子どもの連れ去りや誘拐の半数近くが下校時間帯に起きていることが24日、警察庁のまとめでわかった。男女別では女児が65%を占め、多くが道路上で事件に巻き込まれていた。同庁幹部は「町内会や学校が意識を高め、事件を起こしづらい地域を作ることが一番の防止策だ」と呼びかける。
神戸市の事件を受け、昨年1年間に13歳未満が被害にあった略取・誘拐事件94件を分析した。
まとめによると、発生時間がはっきりした62件のうち、47%に当たる29件が午後2~6時に起きていた。習い事や塾に出かけたり帰宅したりする午後6~8時も7件あった。発生場所別で最多は道路上の28件で、共同住宅の25件が続いた。
男女別では女児が61人、男児が33人。年齢は0~5歳が32人、6~12歳が62人だった。6~12歳の女児が47人で、被害者の半数を占めた。昨年1年間に摘発した75件のうち、31件は容疑者が被害児童と面識がなく、別居中の子を連れ去るなど「親族」も30件、「知人、友人」も5件あった。
この10年間をみると、13歳未満が被害にあう略取・誘拐事件は141件を記録した2004年以降減少。08年に63件まで減ったが、ここ数年は90件前後で推移している。警察庁は被害防止策として、防犯カメラ、街路灯の設置▽不自然な時間に外出している子どもへの声かけ▽登下校時のボランティアのパトロール――などをあげる。(八木拓郎)
■見守り隊や安全マップ、各地で対策
子どもたちが狙われる事件は、どうしたら防げるのだろうか。国も地域も対策に力を入れるが食い止めきれず、模索が続く。
文部科学省によると、子どもに防犯ブザーを配布・貸与する小学校は、2011年度時点ですでに全国の82%に達している。保護者らの付き添いなど登下校時に安全対策を講じる小学校や幼稚園も96%に及ぶ。
今回の事件があった神戸市では、1997年に起きた同市須磨区の連続児童殺傷事件などを受けて、子どもたちを見守る活動が本格化。登下校を見守る地域住民の「子ども見守り活動隊」は全169小学校に配置され、隊の登録者は約3万8千人(13年度)に達し、同市教委の担当者は「地域の関わりは年々厚みが出ている」と話す。それでも悲劇を防げなかったことに、須磨区の北須磨団地自治会の西内勝太郎会長(74)は「子どもを守るため、学校・地域・保護者ができる限りのことをやり続けるしかない」と話す。
大阪府箕面市は今年、14すべての小学校区の主要通学路に計750台の防犯カメラを設置する方針を打ち出し、約1億5千万円の関連予算案を市議会に提案した。70メートルほどの間隔で設置し、通学路の死角をほぼなくしたいという。市の担当者は「大きな経費だが思い切った。犯罪の抑止効果も狙っている」とする。
ただ、課題も浮上している。04年に小学1年の女児が下校中に誘拐、殺害された奈良市では、地域ボランティアらが見守り活動や夜間巡回にあたる。防犯ブザーは小学1年生全員を対象に配布しているが、事件の風化もあり最近は携行しない子もいるという。市教委の関係者は「危機意識をいかに保つか。安全教育の継続と徹底が大切だ」と話す。
05年に小学1年の女児が殺害された栃木県今市市(現・日光市)の小学校では、事件翌年から毎年、全校児童が「安全マップ」を作る。登下校を見守る自主防犯組織も結成された。隊長の長谷川光明さん(43)は「常に子どもを見守る意識が定着してきた」とする一方、「子どもの自由を制限しすぎないことも大切で、バランスが難しい」と話す。05年に小学1年の女児が殺害された広島市は、「月命日」の毎月22日を「子ども安全の日」と定める。見守り活動の登録者は昨年10月時点で約9万4千人。だが、市教委の担当者は「高齢化が進むなど課題も抱える」と話す。
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