「数カ月で痩せる」のような短期目標であれば、その気になれば達成できるはずです。でも、例えば3年後の目標となるとどうでしょう。その達成は、ずっと難しくなると思います。そんな長期目標を定める前に、陥りがちな落とし穴について知り、あらかじめ準備をしておく必要があります。
中には、短期目標の設定だけで十分だと主張する人もいます(『Dilbert』の作者であるScot Adams氏など)。でも私の場合、長期目標があった方が、自分の達成したいことが明らかになり、それに向かって努力をするようになることに気がつきました。しかし、いかんせんかかる時間が長いので、突如として現れる問題に備えることは容易ではありません。そこで、何が起こりうるかをあらかじめ考え、心の準備をしておきましょう。
「自分だけは特別」フェーズ
達成が難しそうな目標でも、自分は特別であると考えることで、意欲が湧いてきます。これは素晴らしいことなので、ぜひ利用するといいでしょう。その反面、自分を特別扱いすると、他人の問題は自分に当てはまらないと考えてしまうことがよくあります。そんなときは、映画『ファイト・クラブ』からこの一言を思い出してください。
お前らは特別なんかじゃない。 美しくもなければ独特の形をした雪片でもない。
あなたは、他人と同じ障壁に、何度も出くわすでしょう。そして、彼らと同じようにひるむことになるのです。彼らの忠告を聞いておけばと、自分を愚かに感じるかもしれません。でも、それで構わないのです。それもプロセスの一環なので、くじけている場合ではありません。自尊心を踏みにじられることの危険性は、彼らの忠告にはすべて従った方がいいと思ってしまうことにあります。
いくつかの失敗を繰り返すうちに、あなたの脳は、物事を関連づけて考えるようになってきます。誰かと同じ失敗をすれば、その後も彼らと同じ経験をすることになると、心が語りかけてくるのです。でも、それは真実ではありません。ですから、そのような関連付けを行わないように意識する必要があります。
現実をしっかりと見極めてください。あなたが、誰かと似た失敗をしてしまったのは事実。だから、彼らのアドバイスを聞いてその失敗を乗り越えることはまったく問題ありません。ただし、その後の経験まで同じになるとは考えないようにしてください。
「オレ何やってんだろ」フェーズ
私の経験上、進み続けるためのベストな方法は、その目標を達成したい本当の理由をはっきりさせることです。Avidumの記事によれば、そのためのコツは、結果ではなく内発的動機に注目することにあるようです。
その目標を達成することがなぜ自分にとって重要なのか、その理由に注目します。例えば、大きな挑戦、自分の痛み、誰かの痛み、イメージなどがあるでしょう。
よく考えて、これらの理由をできるだけ感情的なものにします。なぜなら私たち人間は、自分でどんなに合理的だと思っていても、感情によって動かされているのですから。ここでは、メリットに注目しないように気をつけてください。あくまでも、目標を達成することが重要な理由だけを列挙するようにしておきましょう。
例えば、体重減少を目指す理由は、「自分の健康のため」かもしれません。でもここで、もっとよく考えて、自分の気持ちに正直になってください。もしあなたの内発的動機が「モテたい」だとしても、それを自分で認めることが大事です。
「思ってたよりもツラい」フェーズ
長期目標への道のりは、マラソンのようなもの。決して平坦ではありません。そこでやりがちなのが、初心者のマラソンランナーと同じ過ちを繰り返すこと。スタートから飛ばし過ぎてしまうのです。目標を定めて歩き出したばかりのあなたは、興奮のあまりポジティブなエネルギーに包まれています。でも、そのイニシャルハイが過ぎてしまうと、刺激的だった毎日が平凡になり、間違いは許されないという脅威が支配的になってきます。
例えば、私があるウェブサイトの立ち上げに携わったときのこと。最初の数カ月はとても楽しく過ぎていきました。高い目標を定め、メンバー全員が、それを達成してやるという意欲に燃えていたのです。でも、大きな目標はずっと遠くにありました。やがて誰もが夢からさめ、「今日もまた退屈な仕事か…」という状況に陥ってしまったのです。
曖昧な目標を実行可能にするためには、小さな目標に落とし込む必要があります。こちらの記事では、最終目標と自分のワークスタイルを考慮しながら、3カ月、半年、1年のマイルストーンを定めることを勧めています。そうやって決めた小さな目標でも、そのままでは意欲的すぎる場合があります。ですから、少し寝かせてから、再び見直してみましょう。あなたの働き方を知っている人にも見てもらい、現実的な目標を一緒に考えてもらうのもいいかもしれません。
小さな目標を定めたなら、次なるステップは「それらの目標のみに執着する」こと。これはかなり重要です。例えば、6カ月の目標を3カ月で達成する必要はありません。New York Timesで紹介されていた「10-10-10ルール」が参考になるでしょう。
「Central Park Track Club」のTony Ruizコーチと共同創設者のHandelman氏は、「10-10-10」と呼ばれる手法で、マラソンの距離を3つの区分に分けています。あらかじめ全体のペースを決めておき、最初の10マイル(16km)はそのペースより遅く、次の10マイルはそのペースで、最後の10kmは全力で走るというやり方です。
「このスタイルのポイントは、最終段階のためにエネルギーを残しておくこと」とRuiz氏は説明してくれました。
「こんなにたくさんの人に対応できない」フェーズ
長期目標を1人で達成することはできません。毎日のように誰かと連絡を取る必要が出てくるでしょう。ベストな方法は、できるだけ目標値をオープンにして、誠実であることです。好意を示してくれる人には、徹底的に甘えましょう。そのためのプロセスについては、こちらの記事(英文)で詳述しています。
目標を公開すると、あなたの周りには2つの集団が現れます。それは、否定的なグループと、過剰に熱狂的なグループです。最初のうちにやっかいなのが、否定的な集団。何でも否定されるので、あなたの目標や意志が揺らいでしまうのです。「Personal Excellence」のCelestine Chuaさんは、相手が否定的な態度をとる理由を知ることから始めてみてはと言います。
その理由は、彼らが本当に不安を抱いているから。あなたがやろうとしていることは、彼らもやったことがないこと。だから、あなたが成功できるかどうか、彼らには不安なのです。成功したとしても、彼らは自分の人生が間違っていたことになってしまうのが不安。自分のポテンシャルを生かし切れず、人生を無駄に過ごしていたことを知るのが不安。彼らのそのようなメンタルを理解できれば、あなた自身は自分の目標値に不安を感じる必要がないと知ることができるでしょう。
Chuaさんの説明には少し極端なところもありますが、否定的な人の気持ちを理解するという共感アプローチには、私も賛成です。私自身、正直無謀ともいえるような目標を追求するために前職を辞めたとき、同じように見方を変えることでずいぶんと助けられました。そこまでいけば、あとは自分次第で何とでもなるでしょう。「Zen Habits」には口うるさい外野に対処する別の方法が載っていました。
否定的なグループの対極にいるのが、賛同者のグループ。あなたの成功を心から願ってくれる人たちで、非常にありがたい存在です。落ち込んでいるときでも、彼らの声援があなたを支えてくれるでしょう。サポートやアドバイスが必要になったら、彼らに相談しましょう。ただし、あなたがつまずいたり、彼らのアドバイスに従わないと、彼らはショックを受けてしまいます。
ここでも、なぜ彼らがあなたを応援してくれているのか、その理由を知ることが大事です。成功の喜びを一緒に体験したい人もいれば、ただあなたのことを応援したい一心の人もいるでしょう。いずれにしても、彼らとは良好な関係を育むべきです。
「こんなこともうやめたい!」フェーズ
愛とは素晴らしい言葉ですが、多用され過ぎて、本来の意味が失われています。でも、長期目標を達成するには、日常のルーチンワークを愛する必要があります。実はこれが、目標達成への道のりで、いちばんツラいところなのです。
長期目標を達成するには、必ず反復が必要なタスクが付いてきます。例えば、毎日のジム通いや、出納帳の記録など。それらの退屈な作業は、機械的にこなしていくしかありません。やがて、「1回ぐらいミスしたってどうってことないか」と思うようになり、それが癖になることも。でも実際は、このようなルーチンワークがラクになる方法なんて存在しません。James Clear氏によれば、必要なのは、そのプロセスを心から愛する方法を見つけることだそう。
堅実に目標を達成している人たちを見れば、彼らを特別にしているのは、イベントでも結果でもないことがわかります。それよりも、彼らが他人と違うのは、プロセスへの専念。イベントよりも、毎日の練習を愛しているのです。
退屈な作業を愛すること。反復や練習を愛すること。プロセスを愛すること。それさえできれば、結果は後からついてきます。
さらっと書かれていますが、これを実践するのはとても困難だと思います。人生において非常に重要な意味を持つ人物でも愛せないことがあるように、愛することができないプロセスは必ず存在します。そこに、秘密のレシピは存在しません。ただ、そのような感情があることを理解し、愛することができるプロセスを見つけられるまで、変更を加えていくしかないのです。
その域に到達すれば、あとは順風満帆な未来が待っているでしょう。
Mihir Patkar(原文/訳:堀込泰三)
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