先日のゲリラ豪雨は、ひどかった。東京メトロ恵比寿駅ホームの天井から、打たせ湯みたいに水が流れ、代々木では道路にできた“池”に水没した車を、警察官が泳いで救助。渋谷ではマンホールから水が噴射した。
雨量は1時間に45ミリほど。一般的に豪雨は同100ミリ超だから、大した量ではない。しかし、そこに落とし穴がある。
気象予報士の森田正光氏が言う。
「1時間に45ミリといっても、正味10~20分ほどで降ったもの。1時間降り続いていれば100ミリを超えていたはず。短期集中型だったのです。それで、排水能力を超えた水が行き場を失い、マンホールからあふれ、相対的に低い、くぼ地に集まって、被害をもたらしたのです」
水没した車の運転手は“池”の水が濁り、道路との色の違いに気づかずに“池”にザブン。「水圧でドアが開かず、ヤバいと思った」と“最悪の事態”を考えたそうだ。十数分の雷雨で車が水没し、生死に直面するなんて、ちょっと異常。ゲリラ豪雨の域を越えている。“分殺雷雨”といっていいだろう。そんな“分殺雷雨”はこれからが本番だ。
「梅雨が明けると、太平洋高気圧が日本に張り出して夏になります。しかし、太平洋高気圧が弱まったところに寒気が入り込むと、大気が不安定になる。夏は今より上空との気温差が大きいので、雷雨は先日より激しい。9月までは要注意です」(森田氏)
■ナメたら怖い都市被害
それでも、“分殺雷雨”による被害が大きくなりそうな場所が分かっていれば、備えになる。地理空間情報アナリスト・遠藤宏之氏が言う。
「渋谷の被害が典型で、“分殺雷雨”の被害は下水や川の排水能力を超えたところに起こります。それが都市被害の特徴です。下水道がどこにあるか? 下水道は暗渠化された川が担っています。渋谷の駅前は宇田川と渋谷川の合流点で、それらが暗渠化されているので被害は必然です。かつて川があったところは渋谷の『谷』のように、『田』『沼』『鷺』『池』『窪』『堀』『橋』『泉』『井戸』『塚』など、水をイメージさせる字が地名についています」
たとえば、東京23区から遠藤氏が指摘する文字を含む地名を、ランダムにチョイスしてみる。
渋谷区=渋谷駅周辺
世田谷区=池尻、鎌田
千代田区=永田町、神田和泉町、飯田橋
港区=赤坂(かつて溜池と呼ばれたエリア)
文京区=小石川、水道
中野区=沼袋、上鷺宮
練馬区=大泉、田柄
杉並区=井草、高井戸一帯
新宿区=落合一帯、中井、高田馬場(かつて戸塚と呼ばれたエリア)
豊島区=池袋本町、高田
しかも、ハザードマップに照らしてみると、リスクが高いところが少なくない。つまり、地名が“分殺雷雨”のリスクを暗示しているのだ。こうした所にいたら、少しでも高い所に逃げればいい。危ないのは車の運転中。
「車はマフラーに浸水すると動かなくなりますから、地面から20~30センチくらいの水たまりができていたら、道を外れた駐車場に車を止めるのが無難です」(災害危機管理アドバイザー・和田隆昌氏)
被害は毎年出ている。「まあ、大丈夫だろう」という甘い考えが事故のもとなのだ。
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