夫の寿命は妻に左右される――。
そんな研究結果がいくつも報告されている。早死にしたくなければ、妻を“見直す”しかない?
デンマークのコペンハーゲン大の研究によると、「口うるさく小言が多いパートナーを持つ男性は、中年期に死亡する確率が高い」という。
36~52歳の男女約1万人を対象に、11年間にわたって調査を実施。その間、がん、心臓疾患、肝臓病、自殺などの理由で死亡した人の70%が、日常生活でパートナーからグチグチ小言を言われ、口論が多い男性だった。
妻から受けるストレスによって、夫の死亡率は2.5倍に上昇するというから驚きだ。
東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授は、こう説明する。
「ストレスを受けると、ノルアドレナリンやアドレナリンといった『カテコールアミン』という神経伝達物質が上昇し、心拍数の増加や血圧の上昇が生じます。これによって動悸(どうき)やめまいなどを感じますが、ストレスがなくなると正常に戻ります。しかし、同じくストレスによって増加する副腎皮質ホルモンの『コルチゾール』は持続性があり、慢性的にストレスを受けているとコルチゾールが常に上昇している状態が続きます。血圧上昇、代謝高進、血糖値上昇などが持続することになるためで、心臓血管病を発症させる要因になったり、それを急激に悪化させる心臓血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)を招いたりするケースも多いのです」
また、コルチゾールの持続的な上昇は免疫低下や慢性炎症も引き起こし、発がんリスクの上昇にも関わっているという。
■職場のストレスより家庭のストレスが深刻
身近にいる妻がストレスの源になっている夫は、命の危険と背中合わせということなのだ。
他にも、「妻の仕事が不調だと、夫が2.7倍の確率で冠動脈疾患になる」という報告もある。家庭で仕事のグチをこぼし、上司や部下への不満を口にする妻に対し、夫のストレスが増大するのが大きな原因だ。
また、妻の何げない言動によって受ける無自覚ストレスが男性ホルモンを低下させ、ホルモンバランスが崩れることで心臓血管イベントが増加するという研究や、自律神経の異常により、動悸、めまい、頭痛、腰痛などの症状を引き起こすケースもあるという。
「男性は妻の小言や過度の要求に対してストレスを受けやすいといえます。男性は職場で長時間過ごしている場合が多く、そこでのストレスに対しては同僚や会社に相談するなどして、ある程度は対処できます。しかし、家庭で妻から受けるストレスに対しては誰にも相談できず、ひとりで抱え込んでしまう人が多いからです」(東丸教授)
男性は女性よりも家庭で受けるストレスに弱い。家庭内ストレスによる妻の死亡率はそれほど変わらない結果だったのに、夫の死亡率が2倍以上にハネ上がるのはそのためだ。
早死にしたくない人は家庭円満を心がけ、妻に態度を改めてもらうしかなさそうだ。
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