もしも他人から顔をそむけられたら……? 男女問わず自分の体臭が人に不快感を与えてしまったらやはりショックでしょうし、全く気にしないのは難しいかもしれません。くさいと言われたとしても、相手の感覚的な問題。実際には他の人は全く気にならないレベルかもしれません。
自分のにおいは、長年なじんでいるせいか、自分ではなかなか気付けないもの。自分ではにおわないと思っても、相手のちょっとした仕草から、自分はにおうのではないかと不安になる場合もあるでしょう。場合によっては自分はくさいと思い込んでしまい、「自己臭症」を発症してしまうケースがあります。
■自己臭症の特徴・症状
それほどではない自分のにおいを、他人が顔をそむけるほどくさいと思い込んでしまいます。他人が他の理由で鼻を覆ったり窓を開けたりしても、自分が原因と落ち込むことがあります。
自己臭症は比較的まれな疾患ではありますが、自己臭症になると臭いに対する悩みを誰にも打ち明けられずに抱え込むことが少なくないため、実際の患者数は把握されている以上に多い可能性があります。
症状は以下のとおりです。
・自分はくさいと思い込んでしまい、自分のにおいのことが頭から離れない
・他人の仕草が自分のにおいを避けるものではないかと疑いやすくなる
・気になる部位を一日に何度も洗い続けたり、下着をすぐに替える、消臭剤を過剰使用するなど、強迫的行為が顕著になる
・気持ちが冴えず、日常の大切なことが手につかなくなってしまう
・対人状況を避けるようになってしまう
■自己臭症の治療法
自己臭症の治療は、自分はくさいという観念が不合理であるということを正しく理解するとともに、その観念から引き起こされる対人状況での不安感や、においを抑えるための強迫的行為を軽減させることが大切です。そのために、心理療法と薬物療法が行われます。
薬物療法でどの治療薬が選択されるかは個々人の病状によります。たとえば自分のにおいが気になるあまり、気分の落ち込みが強くなってしまっている場合は抗うつ薬で治療していきます。においを抑えるための行為が強迫的になっている場合には、脳内神経伝達物質のセロトニンの作用を調整する治療薬の中から、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などを使って治療していきます。
自己臭症になると自分はにおっているという思いこみが強くなるため、自力で精神科受診を思いつく患者さんはあまりいらっしゃいません。心の苦しみを誰にも相談できずに抱え込んでしまうことが多く、精神科(神経科)受診が解決策であることに気づきにくいのです。
症状が進むと、人前に出ることを恐れるあまり家に引きこもったり、死にたくなるほど気持ちが落ち込んでしまったりすることがあります。自分のにおいに対して悩みがある場合、自己臭症の可能性にも目を向けてください。ご家族などの身近な方に同じような症状が見られる場合は、周りが受診を促してあげることも大切です。
文・中嶋 泰憲(All About 強迫神経症・不安神経症・パニック障害)
中嶋 泰憲
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140422-00000006-nallabout-hlth