あけましておめでとうございます。
久しぶりに年末年始を日本で過ごしてパリに戻ると、アパートの管理人さんが飾ったツリーの下にある、「クレッシュ」というキリスト誕生を再現した飾りには、すでに東方の三賢者が登場していた。
毎年12月25日の朝になると、24日まで空っぽだったクレッシュの馬小屋に赤ちゃんのキリストが誕生しており、1月6日になるとエピファニー(公現祭)といって、東方の三賢者が現れるというストーリーが展開する。私は毎年これを楽しみにしている。
公現祭とは、キリスト誕生の12月25日から12日目が明けた1月6日に東方から三賢者が来訪したことを祝う祭りである。3人の賢者たちは星に導かれ、キリストの降誕を知り、東方からお祝いの品を持ってキリストを拝みにベツレヘムへ来る。エピファニー(Epiphanie)の語源はギリシャ語の「出現」である。また三賢者のことをフランス語ではles rois mages 、マギ僧と言い、ゾロアスター教の僧侶を意味する。お祝いの品は、黄金、乳香、没薬もつやく。
薬としても使われた「お祝いの品」
乳香とはカンラン科ボスフェリア属の樹木から分泌される樹脂のことである。これらの樹皮に傷から樹脂が分泌され、酸素に触れて固化し乳白色の塊となる。乳香という名もこの色から由来している。起源は紀元前40世紀も前のエジプトにさかのぼる。この頃の墓から発掘されている。古代エジプトでは神にささげる神聖な香として、聖書でも神にささげる香の調合として用いていた最古の薫香料のようである。また薬としても鎮痛、止血に用いられていた。
没薬もまたカンラン科ミルラノキ属の樹木から分泌される樹脂のことで、酸素に触れて赤褐色の塊となる。古くから香として焚たいていたといわれ、殺菌作用があることから防腐剤として使用されていた。ミイラを作るときにも使用されており、ミイラの語源はミルラにあると言われている。
ガレットに乳香、没薬の香り
この祭りでは「ガレット・デ・ロワ」というお菓子を食べる習慣がある。アーモンドクリームで焼いたシンプルなお菓子だが、お祝いの品の乳香や没薬の香りで焼いたガレットなどもある。お正月のお節料理をたくさんいただいて、いよいよ節制せねば、というときに大好きなガレットの季節である。
今年もご愛読いただきますよう、よろしくお願い致します。
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