[ カテゴリー:子ども, 社会 ]

ネット世界で「大人慣れ」しない学生…期間も短縮 就活の現状を分析

2015年春の採用に向けた主要企業の会社説明会が12月1日に解禁され、大学3年生らの就職活動が本格化している。12月が解禁日となるのは今年度が最後となる。経団連のルール変更により、来年からは3年生の3月に繰り下げられる。一方、景気の回復期待により、企業の採用意欲は高まることが予想されている。企業の新卒採用と学生の就活事情を取り巻く環境は大きく変化しており、新卒採用支援サービスを展開するネオキャリアは、「弊害もある」と分析する。

■採用プロセス短縮、就業体験拡大…企業は対応に躍起

「昨年の2014年卒の活動では、ボーダーライン上の学生が、早々に大手企業から内定を得る例が散見されました」

企業の採用計画を支援する、採用インテグレーション事業部長の小櫃靖也氏はこう分析する。

従来は大学3年生の10月1日だった採用広報の解禁日が、2年前(2013年卒の活動)から12月に繰り下げられた。広報期間が短くなった分、企業説明会が重なり、その年の参加学生数は「7割に減った」。人数が減っただけではない。学生が業界研究に費やせる日数も減り、「なぜこの会社を志望したのだろう、と首をかしげたくなるような学生も増えた」と質の低下も招いたという。

そうした経験をふまえ、「多くの企業がその対策を講じている」と小櫃氏はみる。

まず企業自身が、社内の採用プロセスを見直し、スケジュールを短縮化した。企業説明会から採用選考に費やす時間を短くした結果、早々に内定を出すようになった。「今年はさらに多くの企業が、採用期間を短縮しているとみられる」(小櫃氏)

また学生が企業と接触する機会の拡大の取り組みも広がり始めた。実例として小櫃氏が挙げるのは、大手就職サイトに掲載されているインターンシップ実施企業の数だ。昨年は2300社だったが、今年は4100社超と、大幅に増加した。「解禁日の前に、優秀な学生と接点を持とうとする姿勢が顕著です」

選考期間が短くなるため、インターンシップを採用活動成功の地ならしと位置づける企業が増えているようで、小櫃氏は「企業は今後も環境変化への対応が迫られる」とみている。

■「大人慣れ」しない就活生が増殖!

環境変化は学生にも影響を及ぼす。

大学3年生の就職活動がスタートした一方で、来春卒業の現在4年生の就職内定率は64.3%(10月1日時点、文科省・厚労省調べ)。まだ多くの学生が活動を継続中だ。企業の採用計画に沿って新卒の学生を紹介する、就職エージェント事業部の橋本健一氏は、同社の就職支援サイトに登録した学生のカウンセリングにあたる。

「就職サイトに登録だけして、あまり足を使わない学生が多いのが最近の傾向です」会社広報の解禁日、学生はパソコンの前に座り、一斉に会社説明会の予約を申し込む。エントリーシートの提出もネット経由。バーチャルな世界で「就活している気になっている」

「一昔前は、説明会の予約も電話で行いました。手間はかかりますが、そこで社会人の方と話をし、OB訪問をし、『大人慣れ』してから面接に臨めたのです。今のネット偏重の活動だと、大人との接点がないまま、いきなり面接となり失敗します」

「大人慣れ」するいい経験となるのがインターンシップだが、枠が限られ、参加できない学生も多い。そうした学生にとって選考期間の短期化は、社会人と接する機会が減ってしまい、ますます不利になるかもしれない。

■マッチング「壁は親」

同じく就職エージェント事業部の加茂敬一氏は、サイトに登録した学生と、求人企業との橋渡し(マッチング)を行う。

「これまで独自に採用活動で成果をあげてきた知名度の高い企業からも、新卒学生の紹介を求められるようになりました。不動産業や携帯移動端末など、業績の上振れを見越した追加採用が多いですね」

求人があっても、学生になじみのない企業も多い。加茂氏は学生を企業の採用担当者に何度も会わせ、お互いの理解を深めながら採用選考をサポートする。しかし、ようやく内定を獲得しても、親の反対で内定辞退に至る例が多いのが最近の傾向だという。

反対理由はさまざまだ。企業イメージなど先入観で断る例や、いわゆる『ブラック企業』であるかどうかを気にすることもあるという。

「ネットで検索すると、どんな企業にも悪い話はあり、全てがブラック企業になってしまいます。親御さんには、就職活動をするお子さんと同じように、ぜひ企業研究をしていただきたいと思います」

高校受験、大学受験、そして就職活動と、就活を受験と同列に考える親も少なくない。 

「就職は、学校に代わって会社に籍を置くということではなく、自立して経験を積むとこであると教えてほしいですね」

「学業に専念できるように」と段階的に繰り下げられる就活解禁日。しかし、選考期間の短期化により、学生の企業理解が不十分になるなど弊害もある。インターンシップが事実上の選考過程となることで、参加できない学生にとっては不公平感が否めない。一方、なかなか内定を得られない学生の活動は卒業間際まで続き、現状は「学業に専念」とはほど遠いようだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131227-00000552-san-bus_all

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