ノロウイルスによる感染性胃腸炎が流行し始めた。年末にかけて感染者はさらに増えそうだ。専門家は「持病のある人、お年寄りや子どもは、こまめな手洗いなどを心がけて」と呼びかけている。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は毎年11月ごろから増え始め、12月から翌年1月にピークを迎える。国立感染症研究所によると、11月18~24日の1週間、全国3000カ所の医療機関で診断された患者は、1機関当たり6.72人で前の週(5.74人)より約2割増えた。宮崎や熊本で10人を超えるなど、特に九州で多い。
ノロウイルスは感染力が強く、口から入ると腸管で急激に増え、激しい水様性の下痢や嘔吐(おうと)、腹痛、発熱などを引き起こす。ウイルスが混入した生の貝や食品などを食べて食中毒を起こすこともある。症状は数日で軽くなるが、高齢者は誤って嘔吐物が気道に入って肺炎を起こしたり、窒息したりする場合がある。
感染症に詳しい松本哲哉・東京医科大学主任教授によると、ノロウイルスは乾燥に強く、テーブルやドアノブ、水道の蛇口、トイレの便座などに付着して数日間生きていることがあるため、職場や家庭で誰かが感染すると、ドアなどに触るだけで容易に感染する。松本教授は「皮膚に付着したウイルスを体内に入れないためにも、こまめな手洗いを」と呼びかける。
ノロウイルスのワクチン開発は研究段階で、有効な治療薬はない。市販の下痢止め剤を服用する人もいるが、ウイルスの病態に詳しい森内浩幸・長崎大大学院教授は「下痢は悪いものを早く外に出そうとする防衛反応。下痢止めを服用すると腸内にウイルスをためこむことになり逆効果」と指摘。松本教授も「下痢と嘔吐で脱水になりやすいため、水分は少しずつでも補給する。吐き気が強くて水分が取れない時は、医療機関で輸液を行うと良い」とアドバイスする。【小島正美】
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