[ カテゴリー:生活, 食育 ]

レシピ本:ブームは「病院食」 さよなら「薄味、まずい」

「病院食」のレシピ本が続々と出版され「学食」や「社食」に続くブームとなっている。本で紹介したメニューをレストランで一般客に提供したり、料理教室を開いたりする医療機関も出てきた。「病院食=薄味、質素、まずい」は、もう古い?【中村かさね】

北里研究所病院(東京都港区)のレストラン「つくし」で8月、糖尿病センター長の山田悟医師(43)による料理教室が開かれた。7月出版の「北里研究所病院Dr・山田流『糖質制限』料理教室」(主婦と生活社)には、管理栄養士らとともに開発し患者に薦めている治療食のレシピを紹介している。

この日のメニューはスモークサーモンのサラダ、ズッキーニとキュウリの冷製スープ、主菜にマトウダイのハーブチーズフライ。糖尿病患者向けとは思えぬボリュームと彩り鮮やかな盛り付けだ。「食事は文化。健康のためとはいえ、おいしくなければ続かないし意味がない」と山田医師。「糖尿病の父のために」と参加した安田愛さん(34)=同渋谷区=は「見た目も量も外食みたいでテンションが上がった。病院のレシピだから信頼できます」と喜んだ。山田医師らの「糖質制限食」は、季節ごとにメニューを変えて「つくし」でも食べられる。

今や病院食本は書店にコーナーが設けられるほどの人気だ。その多くはタイトルに病院名を冠している。0・1ミリリットルから量れる計量スプーンを付け、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)が昨年12月に発売した「国循の美味(おい)しい!かるしおレシピ」(セブン&アイ出版)は25万部のベストセラーに。今冬には続編が出版される。

さまざまな健康情報があふれる現代。特定NPO法人「日本医療政策機構」医療政策ユニット長の宮田俊男さん(38)は「だからこそ医学的根拠のある病院食が受けている」と話す。ただ、全ての病院食がおいしくなっているわけではない。「コスト削減のために食事を外注している病院が多く、大半の入院食は相変わらずまずい。おいしい病院は競争の中で食事に人や金をかけている」からだ。

昨年5月に発売されブームの火付け役となった「せんぽ東京高輪病院 500kcal台のけんこう定食」(ワニブックス)の著者で同病院(東京都港区)栄養管理室長の足立香代子さん(65)は、30年以上前から「病院食をおいしくしよう」と活動している。例えば塩分を抑えるため、スパイスやハーブで味にパンチを利かせたり、だしのうまみを利用したりしている。本は入院食のレシピをまとめたものだが、反響を受けて昨秋から院内レストランでも同じメニューを提供。近隣の会社員らが訪れ1日約300食が出る人気だ。

入院患者用の食器にはノリタケなどのブランド品を使うこだわりよう。「時代とともに病院食も変わらなければ」と、9月に発売されたばかりの同書の続編「日本一の減る塩定食」(同)ではエスニック料理も提案している。足立さんは「家族が病気になったら栄養があっておいしいものを作るでしょ。病院食も同じ」。一方で「患者に金額的な負担をかけないためには、病院側の理解や経営努力が不可欠」とも話す。

「病院食ブームは国の医療費削減にもつながる」と宮田さん。「ただし、たんぱく質などが制限されていれば、健康な人が毎食取るのは良くない場合がある。入れ込み過ぎず、自分に合った正しい情報を選択することが重要です」

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/medical/20131010k0000e040172000c.html

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