こんなことを言って申し訳ないけれど、あなたはしゃべりすぎている。そんなことはない、と思っているだろうけれど、本当だ。
次の簡単なテストを受けてほしい。誰かと長時間会話したあとに、自分が話した時間がどのくらいになるかをパーセントで計算するというものである。ごまかしてはいけない。あなたはもう既に少なく見積もっている。なぜ私にわかるのかって?人の話を聞くより自分が話すほうが楽しいからだ。話すことは高級なカベルネを飲むようなものだが、聞くのはスクワットをすることに似ている。
Photo illustration by Serge Bloch; Getty Images (teeth)
自分が話したと思う割合に20%を上乗せしよう。
もしその割合が70%を超えていれば、あなたはしゃべりすぎだ。私にそれがわかるのは、息子がアスペルガー症候群で、学習の一環として会話の力学を教わっているからだ。
アスペルガー症候群の人は気になることについて独り言を言う傾向があり、人と付き合う上で問題になるかもしれない。若い女性に向かって北米にある全ての地下鉄の駅の名前を言ったりすれば、デートをするのは難しい。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のコーゲル自閉症センターの臨床ディレクター、リン・コーゲル博士によると、最も望ましい会話は1人が話す割合が約50%になったときだとう。モハメド・アリとジョー・フレージャーの試合のような会話をすればいいのだ。
しかし、相手が無口で人の話を聞くのが楽しいという人ならどうするのか、とあなたは言うだろう。勘弁してほしい。相手は聞くのが楽しいわけではない。人の話を聞くことは企業の報告書を読むようなもので、話すのはシナモンパンを食べるようなものだ。
2人の人間が同じくらいの割合で話をする理想的な会話はどうしたら実現できるのか?それは簡単だ。質問すればいい。しかし、「元気?」と言っただけでオプラ・ウィンフリーのようになれると思ってはいけない。相手の話をよく聞いてきっかけを見つけよう。
例えば、友達が「インターンのヘンリーはおかしいんじゃないかしら」と言ったとしよう。
ここで「私のお母さんもそうなの。昨日も美術館でね」と言いたくなっても、言ってはいけない。あなたはしゃべりすぎている。母親の話をする代わりに、「どうしてそう思うの?ヘンリーがハンサムなら、私の姪にどうかと思っているのだけれど」と言ってみよう。
いい調子だ。友達は喜んでヘンリーの話をするだろう。彼女の話が終わったあとに、どうしても必要なら母親のエピソードを話してもかまわない。だが、相手が知らない人、特に自分の母親について話すのであれば、簡潔に話すことだ。本当に素晴らしい話でもないかぎり、長くても1分だ。1分以上話していいのは過去に少なくとも5人から「すごくいい話だね」と言われたことがある話だ。「いい話」ではなく「すごくいい話」と言われなければいけない。
「1分だけ?でも、もっと詳しく話したい」というあなたの不満の声が聞こえる。いや、だめだ。混んだエレベーターの中であなたの母親があなたのほうを振り返って、「あなたの胸が上の階行きのボタンだったらいいのに」と言ったことだけを話せばいい。あなたがやるべきことは素早く人を楽しませ、情報を与え、良い質問をすることだ。
それから、少し休もう。よく話す人は卑劣にも、話の途中はゆっくりと、そして終盤に差し掛かると他人が口をはさめないように一気に話す。自分の会話を一度こっそり録音してみるといい。自分もそうしているとわかったら、それをやめるか、二度と人前に出ないことだ。
もう一つの重要なルールとは話し相手を観察することである。あなたが話している間に相手が携帯電話を眺めたり、ペーパーフットボール(三角形に折った紙)のようにドリトスをくるくる回したり、ネクタイで投げ縄を作ったりしているだろうか?もしそうであれば、話をやめて、相手がもう5本も空けているハイネケンが好きかどうかを尋ねよう。やっと話せると思って相手がほっとしているところを観察しよう。話すことがミゲル・カブレラのホームランなら、聞くことはそのボールが頭に当たることだ。
こんなふうに会話の例を挙げると、仕事みたいだと思うかもしれない。しかも、話すのは気持ちがいいし、他人が自分の愚痴を言っているようには思えないと言うだろう。
いや、実は愚痴を言っているのだ。
会話に参加させてもらえない話し相手は、あなたを陥れようと画策していると思って間違いない。夕食会であなたの席をどこにするかでもめにもめている。「ジョーおじさんの隣はだめ。おじさんの命はあと6カ月しかないんだから」。近くのキュービクルで仕事をしている同僚は「仕事に集中するのに」イヤホンをしなければならないと言ってくる。パーティーで会った人からは必ず「飲み物を取ってきますのでちょっと失礼」と言われる。パーティーではみんな、のどが渇くものなのだ!
この記事を読んで、あなたは自分のことだと思っただろうか。他の人が頭に浮かんだのだろうか?後者なら、その人に記事を送ればいいと思わないか?だか、あなたは相手の気持ちを傷つけたくない。さて、どう対処する?
まともな質問ではないだろうか?さあ、今度は私が聞き役に回るから、あなたが話してくれ。
(ラゼブニック氏はテレビアニメシリーズ「シンプソンズ」の作者の1人)
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304676604579118204065286002.html?reflink=Goo&gooid=nttr