あまり知らない相手と話すとき、じっと相手を見つめているだけで何も口から出てこない──。そんな「気まずい」シチュエーションに覚えがありませんか。
この記事では、私たちが会話でついやってしまいがちなミスと、それを避ける方法について紹介します。
以前、初対面の人との世間話を楽しい会話にする方法について紹介しましたが、こうした失敗は、初対面の相手だけでなく長年の知り合いとの間でも起こります。ここで紹介する方法は、そんなあらゆる気まずいシチュエーションに役立つ方法です。
1.相手を十分に褒めていない(そして、相手に褒められても上手に受け入れていない)
・褒めろ!
誰かに褒められると、気分は良くなり会話も楽しくなるはずです。「褒める」のはとてもシンプルに会話を改善する方法で、どんな社会的シチュエーションにも適用できる戦術です。
基本的なアイデアは、相手を褒めていい気分にさせること。『Influence: The Psychology of Persuasion』の著者であるロバート・チャルディーニ(Robert Cialdini)博士は、以下の2つのやり方をすすめています。
正直に褒める:場合によっては難しいかもしれません(特に、相手があなたとの間に距離を置こうとしている時はなおさらです)。そんな時でも、我が身を客観的にすれば、相手の褒めるべき点を見つけられるはず。積極的に褒めると相手の緊張がほぐれ、あなたに対する態度を変えてくれるはずです。
助言を求める:チャルディーニ博士は、政治の達人であり人間関係の構築を得意としたベンジャミン・フランクリンから着想を得て、「専門的なアドバイスやおすすめの本などを聞く」戦術を編み出したのだとか。「そうすることで、”コミットメントと一貫性の規則”に持ち込むことができます」。つまり、相手はあなたの行動に注目し(あなたに助言し)、そこから結論を導き出しているのです(結果的に相手はあなたのことが好きになっているはず)。これは、心理学では非常に一般的な現象です。
『Journal of Marketing Research』に発表された研究によると、必ずしも誠実に褒める必要はないそうです。たとえ不誠実な褒め方であっても、褒められた相手はすぐに気を良くし、会話全体を好意的にとらえるようになるとか。これを踏まえて、ネクタイを褒める、主張が良く練られていることを褒める、アイデアを褒めるなどの方法で、相手の緊張を解きほぐすことに努めましょう。
・褒められたら、受け入れろ!
誰かに褒められた時、それを素直に受け止めるのは難しいです。「The Art of Manliness」では、そんな時のアドバイスが紹介されています。
褒められると、つい謙遜をしてしまいがちです。でも、相手の賛辞を完全に受け入れても、決して「うぬぼれている」と思われることはありません。
褒めたのは他の誰でもない、「相手」です。あなたは、相手の評価をただ確認するだけに過ぎません。相手の判断を否定するよりも、受け入れて感謝する方がずっと紳士的です。
それに、自分が過去にした「いいこと」について誇りに思うのは、決して悪いことではありません。小さなプライドには、自分の実績に対する正直な評価は伴っても、自信過剰の感覚は伴いません。礼儀正しく感謝すると同時に謙虚であるのは、決して不可能ではありません。ですから、褒められたら「ありがとう」と言うのが最善の対応。シンプルで飾り気のない「ありがとう」は、どんなシチュエーションでも効果を発揮します。
礼儀正しく「ありがとう」と言って、次の話題に移る。それだけで済むのですから、私たちが考えているよりもずっと簡単なことのようです。
2.相手の話を聴かない
「いい会話は、相手の話を聴くことから」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。これは、ただ相手の近くで聞いていればいいということではありません。実際は、聴くための方法を正しく理解し、会話に参加していることを示す反応をする必要があります。これは、積極的傾聴と呼ばれる方法です。
・精神的傾聴で乗り切れ!
積極的傾聴の基本は極めてシンプル。聴く、注意を払っていることを示すコメントをする、重要な言葉は繰り返す、議論を進めるための質問をする。「Forbes」では、積極的傾聴について、次のように説明しています。
積極的傾聴とは、相手から送られたメッセージを受け止め、本当の意味で理解することです。これには、言葉だけでなく、言葉以外が伝えるメッセージも含まれます。言葉以外のメッセージとは、相手の姿勢や口調、表情などのこと。また、積極的傾聴には、現在の状況、背景にあるストーリー、相手の期待などの前後関係の理解も必要です。
基本的には、常に注意を払い、相手の口から出てくる言葉はもちろん、言葉以外のヒントに対しても、反応を示します。それから、相手の言ったことを別の言葉に置き換え、生産的に会話を進めます。これを実践することで、会話をした双方が、その内容について理解を深めた状態でその場を去ることができるのです。実際にやってみると難しいかもしれませんが、非常に有意義な方法です。
3.正しい質問をしていない
・とにかくたくさん質問しろ!
会話中に相手に好印象を抱かせるもっともシンプルな方法が、相手にたくさんの質問をすることです。実際は何もしていないのに、たくさんの質問をするだけで相手はあなたを会話上手だと感じてくれるのです。
「The Wall Street Journal」に、こんな記事を見つけました。
私たちは自分のことを話すのが好きなので、自分のことを話さない相手を、会話上手だと思いがちです。相手が答えたあと、会話を途切れさせないでください。関連する質問を続けるか、話題を発展させる準備をしておきましょう。また、明らかな質問は避けた方が無難です。マーブルのエキスパートであり大会の審判も務める60歳の女性は、まず相手の趣味を尋ねるそう。「仕事を尋ねるよりも、すぐに相手のことが理解できます」
これはあたりまえのことのようですが、以前にも紹介したように、ほとんどの人が質問ベタなのが現実です。質問ベタを補うためには、とにかくあらゆる種類の質問をしてみること。ただし、Yes/Noで答えられる質問ではなく、How/What/Where/Who/Whichを問うオープンエンドの質問にすることと、可能な限り仕事や天気を尋ねるようなステレオタイプの質問は避けることに注意してください。
4.「自分に正直」すぎる
「自分に正直であれ」という言葉は、どんなシチュエーションにも当てはまるわけではありません。会話のシチュエーションによっては、「自分に正直であること」が全く逆効果になることもあります。実際は、自分の印象を良くするために、多少の演技も必要なのです。
・多少の「知ったかぶり」はむしろプラスだ!
以前も書いたように、会話においては「知っているフリ」をするのがいいこともあります。ボディランゲージで自信を見せながら、知っている部分だけを強調して、まるですべてを知っているかのように振る舞うのです。多少の演技を混ぜながら会話を進めることは、決して悪いことではありません。
それでは誠実さに欠けるという意見もあるでしょう。でも、「Social Psychological & Personality Science」に発表された研究結果によると、たとえ演技だとしても、自らをポジティブに見せることで、あなたの本当の人間性に対する印象もよくなることが分かっています。それに、「人は専門領域に対しては自惚れているフリをしがち」ということも分かっています。「自分をよく見せる」ことで、実際に自信を強めることにつながり、結果として会話が面白くなることも多いようです。
でも、やり過ぎには注意ですよ。有名人の知り合いの自慢、責任逃れの発言、その他の自慢話などは、逆効果になって人から嫌われることもあるという研究結果が出ています。演技は自信を見せるためであって、思い上がるためにするのではありません。
5.会話で優位に立ってしまう
・好きな話題ばかり話すのはNGだ!
誰だって、会話で優位に立ちたがる人はキライです。でも、自分がそうしてしまっていることに気づくことはなかなか難しいものです。自分が会話上手だと思っていない場合でも、話題に対して神経が高ぶっていたり、興奮してしまうと、気が付かないうちに会話を支配してしまうこともあります。
そこで、会話中には自分を客観的にチェックすることを忘れないでください。Wall Street Journalに、会話を支配しないための2つの方法が載っています。
自分の好きな話題を避ける。これは話し過ぎないためです。 会話が順調に進むにつれて、気持ちが開放的になってきます。でも要注意。相手が話し過ぎている場合、自分のことを話してみましょう。あなたが話すのを中断した時、相手が話題を変えたとしたら、あなたが会話を支配していたということを意味します。
好きな話題を避けるというのは意外かもしれませんが、初対面の人との間で、意図せず会話を支配してしまうことを避けるには有効な方法です。十分に知っている相手であれば、好きな話題について深掘りしても問題ありません。
会話が苦手な人にも、いつでも話題に事欠かない人にも、改善すべき癖は存在するもの。あなたも上記の基本を理解して、会話上手を目指してください。
Thorin Klosowski(原文/訳:堀込泰三)
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