人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って「加齢黄斑変性」という目の病気の治療を目指す理化学研究所などの臨床研究について、田村憲久厚生労働相は19日、実施計画を正式に承認した。iPS細胞による臨床応用は世界初。来年夏にも患者への移植手術が行われる見通しで、iPS細胞による再生医療の実現へ大きな一歩を踏み出す。
厚労省は今年6月末の審査委員会で、臨床研究を条件付きで了承。上部機関の審議を経て厚労相が最終的に計画を承認した。理研と移植手術を行う先端医療センター(神戸市)に実施許可の文書を郵送した。
臨床研究は理研発生・再生科学総合研究センター(同)の高橋政代プロジェクトリーダーらが計画し2月末に申請。同省は世界初の臨床研究で社会的な影響が大きいことから集中的に審議し、標準的な審査期間より2カ月短い5カ月間でのスピード承認となった。
iPS細胞は、あらゆる組織や臓器の細胞を作り出せるため、病気やけがで機能を失った細胞を置き換える再生医療への応用が期待されている。ノーベル賞を受賞した京都大の山中伸弥教授が平成18年にマウスで作製。翌年にヒトで成功してから、わずか6年で臨床応用への道が開かれた。
山中教授は「世界の先陣をきって日本で臨床が始まることを大変喜んでいる」とのコメントを出した。
加齢黄斑変性は網膜の中心にある黄斑部が老化で障害を受け、視力が落ちる難病。臨床研究は日本人に多い「滲出(しんしゅつ)型」で50歳以上の患者6人を対象に行う。
今年度中に患者を選び、皮膚を採取してiPS細胞を作製。網膜色素上皮細胞に分化させて移植する。視力の大幅な改善は見込めず、安全性を確認するのが主な目的で術後4年間、調査する。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130720106.html