国内有数の生産量を誇り、盛漁期を迎えた宮城県石巻市表浜地区のアナゴが高値で取引されている。輸入物の減少に加え、ウナギの代替とする需要も理由とみられ、東京・築地市場で人気を博している。浜値の上昇を漁師たちは歓迎するが、値上がり分を卸値に上乗せできない地元の仲買業者は複雑な表情だ。
宮城県漁協表浜支所によると、今の時期の浜値は例年1キロ当たり1000円前後だが、ことしは1500円を超える日が珍しくない。韓国産の輸入量が減っている上、「資源減少で流通量が落ち込んだウナギの代わりに引き合いが増えているのではないか」(同支所)とみられる。
表浜地区のアナゴ漁シーズンは6~12月で盛漁期は7~9月。仙台湾全域で水揚げされ、肉厚なのが特徴だ。東日本大震災の影響で量は減ったが、昨年は170トン、1億8300万円を水揚げし東日本でトップだった。
漁法はプラスチック製の特殊な筒に餌を仕込み、アナゴをおびき寄せる。船上で入札に掛けられた後、水槽に入れて築地市場に出荷される。表浜地区で最もアナゴ漁が盛んな小渕浜の漁師大沢幸広さん(42)は「自然相手だから水揚げが少ない日もあるが、浜値が高いのはありがたい」と顔をほころばせる。
一方、地元のアナゴ仲買業「マルト石森水産」社長の石森敏夫さん(62)によると、築地市場の仲買業者から引き合いが多く高値でも落札せざるを得ないが、仲買業者とは相対取引のため高く卸すことは難しいという。
「浜値の上昇に東京での売値がついていかない。輸送コストがかかり、赤字覚悟のときもある」と石森さん。「生態に謎が多いアナゴは養殖できず、ウナギと違って天然物が100%。表浜産は鮮度もいいから人気なのだろう」と質には自信を持っている。
ウナギは中国などからの成魚や、かば焼きなどの加工品の輸入が減少。国内でもニホンウナギの稚魚シラスウナギは極端の不漁で、ことしは22日の「土用の丑(うし)の日」を前に品薄感が強まっている。
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