「肺炎球菌」妻を亡くしたストレスから激しい咳
Rさん(68)を襲った病気は「肺炎」。 激しい咳に見舞われ、高熱が続いたが、彼は自分から病院に行こうとはしなかった。 たまたま様子を見に来た娘に発見されて、事なきを得たのだが…。
Rさんは昨年秋、最愛の妻を失った。 くも膜下出血で倒れ、翌日息を引き取った。 生気をなくした彼は、取り乱す暇もなく葬儀を終え、一人暮らしが始まった。
「いて当たり前」の存在を失うことが、これほどつらいことだとは思いもしなかった。 食欲はわかず、たまにコンビニに行って弁当やカップラーメンを買ってくるだけの生活。 そんな状況で、あの“咳”が始まった。
猛烈な咳と高熱で意識が遠のく。 しかし彼は助けを求めなかった。 このまま妻の元に行けるなら、それでいいと考えていた。
娘が訪ねたときは半死半生の状況で、救急車で病院に搬送。 どうにか一命は取り留めたのだが…。
「国内で年間10万人が肺炎で命を落としており、その大半が高齢者。 そして、60歳以上の肺炎患者の約半数を占めるのが肺炎球菌による肺炎です」と語るのは大阪厚生年金病院内科医長の鈴木夕子医師。 じつはRさんの肺炎も肺炎球菌が引き金だった。 そしてこの肺炎球菌、ストレスとの関係が非常に強いと鈴木医師は指摘する。
「肺炎球菌は普通に私たちの身の回りにいる菌。 健康な人が感染しても免疫力で発症は防げることが多いが、免疫力の低い高齢者や、ストレスで免疫力が下がっている人などは発症リスクが高まる。 Rさんの場合は、奥様を亡くしたショックで強いストレスを受け、食生活の乱れも重なり、免疫力が下がっていたのでしょう」
入院したRさんは、抗菌剤による治療が奏功し、今は回復に向かっているが、最近は耐性菌も多く、治療が長引くケースも増えている。 「肺炎球菌にはワクチンがあるので、高齢者はあらかじめ免疫を作っておくことが重要」と鈴木医師は呼びかける。
それにしてもRさんの今後が心配だが、一つ大きな希望ができた。 娘がおめでたで、今年は初孫を見られそうなのだ。 その知らせを聞いて、治療に前向きになったRさん。 亡くなった奥さんの分まで、孫をかわいがらないといけませんからね。(長田昭二)
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