6つの原発で敷地内にある「地層のずれ」が活断層かどうか調査を進めている原子力規制委員会は、調査をまだ終えていない3つの原発の取り扱いに頭を悩ませている。当初は「平成24年度内に全調査終了」が目標だったが、他の作業に手を取られ、人手不足もあってずるずると延期。7月に新規制基準の施行が迫り、6原発以外の断層調査も始まる。活断層の有無は廃炉という重大な決断を迫られる場合もあり、扱いに違いが出れば事業者間に不公平感が噴出しかねない。(原子力取材班)
現地調査を終えていない原発は北陸電力志賀原発(石川県)、関西電力美浜原発(福井県)、日本原子力研究開発機構(JAEA)高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)の3つ。すでに終えた関電大飯原発(同)など3つとともに、経済産業省の旧原子力安全・保安院からの“宿題”として規制委に調査が引き継がれていた。
これら6つの原発の調査は、日本地震学会など関連学会から推薦を受けた研究者が主体。これまで原発の審査に関わってこなかった有識者のみで構成されたことなどから、東北電力東通原発(青森県)や日本原子力発電敦賀原発(福井県)は一転、「活断層の可能性が高い」と評価された。
大飯原発では地滑りなのか活断層なのか有識者同士で見解が分かれていまだ決着がつかないなど、当初の予測と外れる事態が続発。有識者会合の運営も途中から別の専門家に検証してもらう場を設けるなど紆余(うよ)曲折を経た。
事務を担当する原子力規制庁の地震担当職員は約20人しかおらず、新基準の策定とともに事務作業に忙殺されてきたことも調査が遅れた原因だ。
7月以降の新規制基準施行後も調査が続行しかねない事態になり、規制庁の森本英香次長は「混乱を招いて申し訳ないが、再稼働のための調査ではないので、残りの3つの原発も同じ形で調査を続けたい」と話した。
新規制基準では、活断層の真上に重要施設を設置することは明確に禁止されており、再稼働の重要な要因となる。ただ新基準の審査は規制委や規制庁が主体となり、外部有識者は「助言」にとどまるなど、これまでの調査とは方法が異なる。
特に問題になるのは、旧耐震設計指針と異なり、新規制基準では活断層の評価年代が「13万~12万年前以降」から「40万年前以降」に拡大していることだ。規制委は「7月以降は、新基準をもとに判断する」としており、すでに調査を終えた3つの原発との判断基準も違ってくる。
調査を待つ事業者は「先にやってもらった方が基準が緩かったのでは」との疑念を持つ。JAEAは4月30日にも断層調査の報告書を規制委に提出する予定だが、旧指針に基づいて13万~12万年前以降の痕跡を中心に調べており、担当者は「判断基準が変われば報告書も書き直さなければならない」と戸惑っている。
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