老人マーケット:国内消費の44%を占めるリッチ層の攻めどころ
■大人の社会見学:参加者の3分の2は60代以上のシニア
シニアの家計支出を調べると、上位項目に必ず入るのが旅行だ。時間的、金銭的なゆとりが多いシニアは、旅行業界の大得意客なのである。なかでも、8年ほど前からシニアをターゲットにした戦略を打ち出し、注目されている旅行会社がクラブツーリズム。2011年度の売上高は過去最高の約1390億円で、2012年度についても2ケタ近い伸びが見込まれている。11年度のツアー参加者(実数)のうち、60代以上が66%と3分の2を占める。
シニアに狙いを定めた理由について、藤浪卓・執行役員営業企画部長は、「目が肥えているのでうるさ型だが、その分、サービスが評価されれば、固定客になってくれるからだ」と説明する。同社のツアー参加者(延べ人数)約500万人のうち8割がリピーターだ。
部門別ではテーマ旅行が成長株。直近2年間で売り上げが12~13%ずつ伸びている。「売り上げ構成比はまだ1割だが今後、3割まで育成する」(藤浪氏)方針だ。テーマ旅行はプロの指導者、解説者も同行するため、参加者の知識、技術が高まる。企画の種類は、スケッチや写真撮影といった芸術系、史跡探訪といった大人の社会見学系、ウオーキングやサイクリングといったスポーツ系などさまざまだ。史跡探訪とウオーキングを組み合わせた「東海道五十三次」を歩く旅は大ヒットした。
目的を選べるテーマ旅行はとりわけ、団塊世代に好評だ。「今の70代以上は旅行経験が少ないので、名所巡りや食べ歩きのセットでも満足してくれたが、それでは旅なれた団塊世代が離れてしまう。その対策の1つがテーマ性という付加価値をつけることだった」と藤浪氏は語る。
■危ないから面白い:用具などにこだわるコアの登山愛好家
中高年登山者の増加が注目されるようになって久しい。それにしても、なぜシニアが山にひきつけられたのか? 危ないから面白いのか?
「登山は特別な運動能力を必要とせず、誰でも参加できる。体力がさほどなくても続けやすいので、健康志向の高いシニアにも受け入れられた。それに、頂上を目指すだけでなく、風景や季節の花、鳥を眺めたり、それらを写真で撮影したりと、自分なりのさまざまな楽しみを見つけることができる。そんなところも人気の出た理由だと思う」
こう説明するのは、登山用品店大手チェーン、好日山荘の八木澤美好・取締役東京支社長だ。実はブーム時の中高年登山者のうち、初心者は3割程度で、残りは登山を続けていたか、若いときに登山をしていた経験者なのだ。
ただし、最近の中高年登山者には変化が見られる。「これまでは、ブームに乗って百名山を踏破すればいいという人も一部にいた。しかし、今では本格的に登山に取り組むコアの愛好者が残った感じだ」と八木澤氏はいう。
こうしたコアの愛好者は、登山のスキルや知識のレベルアップにも熱心。好日山荘では「登山学校」という無料の机上講習会を開いている。60~65歳の受講者が目立って増えている。また、登山用品についても、いいものを長く使う傾向がある。さらに、トレンドにも敏感で、若者と同じように、有名アウトドアブランドの最新ファッションに身を包んでいるのも特徴だ。同社の60歳以上の売り上げ構成比(2011年度)は25.7%になり、客単価もほかの年代に比べて高めとなっている。
http://news.goo.ne.jp/article/president/bizskills/president_9074.html