新型の出生前診断が限定された医療機関で4月に始まる見通しになった。新型出生前診断の現状、課題をQ&A形式でまとめた。(三宅陽子、道丸摩耶)
Q 新型出生前診断とはどういうものか
A 妊婦の血液に含まれる胎児のDNAを解析し、ダウン症など3種類の染色体異常を調べる。タンパク質を検出する母体血清マーカー検査や羊水中の細胞を分析する羊水検査など従来の出生前診断より早い妊娠10週から検査でき、約2週間で結果が出る。陽性だった場合の的中率は80~95%程度、陰性の的中率は99%以上。米シーケノム社が2011年に実用化し、費用は自己負担で約21万円だ。
Q 1回の検査で染色体の異常が確定できるか
A 産科学会の指針は、新型診断で陽性と出ても、確定には羊水検査を行う必要があるとしている。ただ、羊水検査は300分の1の確率で流産が起きる可能性があり、指針では事前にそうしたリスクも説明することとしている。
Q 羊水検査で陽性となるとどうなる
A 日本では胎児に異常があることを理由とした人工妊娠中絶は認められていない。だが、実際には母体の健康を害するなどという理由で中絶するケースは多く、妊婦の判断に委ねられているのが現状だ。そのため、ダウン症の患者団体などから、「新型診断は、命の選別につながる」という不安の声も出ている。
Q 認定施設以外ではできないのか
A 日本には血液を分析する検査会社がない。そのため指針は、日本医学会の部会が認定した施設で、臨床研究として行うことにした。しかし、指針に法的拘束力はなく、罰則もない。2月には民間企業が米国の医療機関での検査の仲介を開始。担当者は「自身の体の状況を知る権利はすべての人にあるはず」と話し、国内の複数医院で採血できるよう提携準備を進めている。提携施設が指針の要件を満たすかは不明だ。
Q 検査希望者は多いか
A 新型診断の実施を計画している医療機関への問い合わせは多く、妊婦の関心は高い。ただ、世論は二分している。産科学会が指針決定前に募集したパブリックコメントは200件以上寄せられ、新型診断の対象をもっと広げるよう求める声も、診断そのものに反対する声もあった。
Q 今後の課題は
A 技術進歩により、あらゆる疾患が出生前に分かる検査ができる可能性がある。そうなれば、どの疾患なら検査すべきなのか、線引きが難しくなる。また、「命の選別」が進むことも懸念される。中絶を選んだ妊婦は心に大きな傷を抱えるとされ、カウンセリング体制の充実も課題だ。
http://sankei.jp.msn.com/science/news/130310/scn13031000550001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/science/news/130310/scn13031000550001-n2.htm